ビリーの指揮するベートーヴェンの「英雄」
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : 交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」Op.55 (1803-04)
演奏者 : ベルトラン・ド・ビリー指揮 ウィーン放送交響楽団
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ビリーの指揮した録音を聞いて、ちょっと新鮮な驚きを感じ、他の録音を漁っていてこれに行き着いた。
本格的な交響曲ではどうなのか?その答えも期待を全く裏切らなかった…。若いと言っても四十代半ばの彼が英雄交響曲を颯爽と指揮し、オケが見事に応えているのは何とも気分が良い。古楽器風の演奏ではなく、あくまで伝統的なベートーヴェン解釈の延長であり、ビリーはとてもオーソドックスな解釈で演奏する。
はるか昔、この曲を朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏会(確かはじめてのヨーロッパ公演の後の帰国記念公演だった…)で聞いて、もの凄く感動したことを思い出すが、その演奏とビリーは全く違う。エネルギーの横溢というか、フレーズを深いブレスで歌うというより、勢いというか軽快なテンポでどんどん進めていく。
だから、終楽章などちょっとサッサと進みすぎて、余韻に欠けるところがある。それはワーグナーでも感じたところである。
しかし、40代半ばの指揮者がそんな円熟した演奏を繰り広げたとしたら、そちらの方が違和感を感じるだろう。私はこの直裁で素直に自分の感性をぶつけたビリーの演奏に深く共感する。
第1楽章などなかなかの名演だし、まるでギリシャ悲劇のような様式美を感じさせられる葬送行進曲は、シュナイト氏の録音のまさに対極にある。でもノリントンなどのような無理なテンポではなく、ゆったりとしたフレージングなので、違和感に悩ませられることはない。
こうしたベートーヴェンなら、安心して推薦できる…。いや良い指揮者だ!!
by Schweizer_Musik | 2008-10-26 12:49 | ナクソスのHPで聞いた録音
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