作曲者 : ROSSINI, Gioacchino 1792-1868 伊
曲名 : スターバト・マーテル (1841) 演奏者 : リチャード・ヒコックス指揮 シティ・オブ・ロンドン・シンフォニエッタ, ロンドン交響合唱団, ヘレン・フィールド(sop), デラ・ジョーンズ(mezzo-sop), アーサー・デイヴィス(ten), ロデリック・エール(bs) このアルバムは こちら ヒコックスが亡くなった。なんということだ!!トムソン、ハンドリー、そしてヒコックスまで…。 彼の六十才というあまりに早い死に、もう言葉もない。イギリスの音楽界のみならず、世界の音楽界はかけがえのない才能を失った。 彼の膨大なディスコグラフィーをここでつらつら述べ連ねるまでもなく、その大きな大きな業績と、今後更なる円熟を迎えたであろうことに思いを至らせるに違いない。 ナクソス・ミュージック・ライブラリーの彼の録音のリストはこちら。 その多くの録音から、まずロッシーニの「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」を聞いてみてほしいと思う。 私はフェレンツ・フリッチャイのモノ録音以外で、ステレオで録音されたこの作品の演奏としてはケルテスやアバド、グラチス、ルネ・ヤーコブスなどの名演に比肩すべき名盤であると思っている。 特に彼が1971年に創設したシティ・オブ・ロンドン・シンフォニエッタと長年に育て上げたロンドン交響楽団合唱団による演奏であるということで、この演奏の価値は計り知れない。 惜しむらくは、ソリストが今ひとつで、特にテノールのやたら張り上げる声にはちょっと閉口。もっと良いソリストをつけてあげたかったというところである。女声の二人は表現の硬さが幾分感じられ、第3曲の「涙をながさない者があろうか」の二重唱でスタイルの違いが感じられ、とても残念だ。デラ・ジョーンズの音程がふらつくのもちょっと気になる。 しかし、それを雄弁なオーケストラと合唱が補う。この録音の素晴らしさはソリストの不備をオーケストラとコーラスが雄弁にまとめ上げている点であろう。 指揮者の力量の高さを痛感させられる。そして曲がなんとも魅力的である。 ああ、私の教え子たちはついついカッコイイ和音などにはまってしまうことが多いのだけれど、私は和音も選び方もセンスが必要だと思うけれど、旋律の魅力がなくてはどうしようもない。和音が単純でも旋律の魅力があれば、これほどの感動をよぶ音楽が書けるのだ。 ヒコックスはカンタービレの神髄を知っている。この演奏はそうした彼の声楽への理解の深さを痛感させられる一枚である。ああソリストが…。 こんなことはユージン・オーマンディの録音などでも時折出会うことだ。プロデューサーの力不足だと私は思う。 彼のCDについてまだまだ書いておきたいので、これはしばらくシリーズとさせていただこう。次回はブラームスのドイツ・レクイエムの予定。ブリテンの戦争レクイエムはすでに書いたので改めては書かないけれど、シャンドスの録音を中心にとりあげようと思う。(ナクソスで聞けるので)
by Schweizer_Musik
| 2008-11-27 12:00
| ナクソスのHPで聞いた録音
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