作曲者 : SCHUBERT, Franz Peter 1797-1828 オーストリア
曲名 : 交響曲 第5番 変ロ長調 D.485 (1816) 演奏者 : レナード・バーンスタイン指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 CD番号 : Grammophon/F00G 20466 昨日は空いた時間があったので、資料室でCDを借りてくる。1987年にバーンスタインがコンセルトヘボウ管に客演して録音したシューベルトの未完成とこの第5番をカップリングしたCDである。 確か「グレイト」も録音していたと思うが、それは聞いた記憶がない。 1987年と言えばバーンスタイン晩年の演奏と言ってもよいだろう。1990年に彼は亡くなったが、最晩年はテンポもかなり緩み、往年の精悍な印象が完全に消え失せてしまっていた。それわ円熟というか、衰退と言うかは聞く側の印象の問題だろうが、私はあまり良い印象は持っていなかった…。 で、このシューベルトも買う気にならないままに終わっていたのである。 この曲については以前に何度か書いたことがある。モーツァルトの40番交響曲を手本としてシューベルトが書いた習作であると。習作でありながら天才の技はそこかしこに聞かれる希有な例でもある。 若いシューベルトが(まだ19才だった!)が書き上げた音楽は、古典派の様式をベースにした見事なものである。それを晩年の演奏様式となったバーンスタインがどう料理するのか…。 当時、音楽評論家がどう書いていたのか、全く記憶がないけれど、ここでのバーンスタインはまずまずの出来だと思う。 何しろ、オケが当時無敵だったロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団なのだ。1987年と言えばすでにコンマスがテオ・オロフの時代であるが、まだクレバースの時代の音を維持していた。 そこに来たバーンスタインがシューベルト若書きの作品をどう聞かせるのか。 実はニューヨーク・フィルハーモニックともこの曲をやっていて、そちらは精悍で素晴らしい出来映えだった。ああ、彼のニューヨーク・フィル時代の演奏をもう一度聞き返したいものだが、どこへ行ったものか…。 しかし、あの弾むようなリズムというか、弾力性のあるテンポはここからは聞かれない。私の記憶の中にあるバーンスタインの面影はここにも聞かれるけれど、すでに強かった彼きここに居ないことを痛感させられる。 聞いてそれほど悪い演奏ではない。テンポも少し遅めではあるが、デフォルメと感じるようなことはない。この五年ほど前、ウィーン・フィルとブラームスの交響曲の全集を録音していた頃からすると、明らかな衰えである。 でも私はこれを聞いて百年の恋も冷めるなどと言うつもりはない。演奏家としてバーンスタインは最善を尽くしているし、みすぼらしい演奏などでは決してない。強いて言うならば細部の弛緩というか、フレーズの切れ目でため息のような疲労感が感じられると言うところだろうか。 音楽家としては1980年代後半の彼に、最盛期のような力強い演奏を期待する方が無理なことだ。 しかし、私はこの演奏を謹んで聞くことにし、最後まで聞き終えた。良い味わいの演奏だ。滋味豊かと書いておこう。長いキャリアの末にたどり着いた姿に対して、私は敬意を払いたい。音楽に彼の生きてきた年輪のようなものを聞く思いであった。 シューベルトを聞くなら、別の演奏で良いだろう。私はこの演奏を聞いてバーンスタインを聞いたと思った。 ところで体調が思わしくなく、今日はちょっと病院に行く。明日は学校に行かなくては…でも神奈川フィルは行けないかもしれない…。残念だ。そうならないようにしたいのだけれど。
by Schweizer_Musik
| 2009-01-15 08:20
| CD試聴記
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