オネゲルのクリスマス・カンタータのフランス初演の時のメンバーによる録音である。よく知られているように、バーゼルでザッヒャーによって初演されて後、直ちにパリで初演されたこの作品であるが、作曲家にして名オルガニストでもあったモーリス・デュリュフレがオルガン・パートを担当するなど、当時大変な評判となったことは言うまでもない。
この初演についてはいくつかの本でも触れられているが、その音(もちろん初演後の録音セッションであるが・・・)を耳にすることができるとは!! 私はこの作品だけは、どんな演奏でも満足できる気でいた。それほど素晴らしい音楽だと今も考えているが、この演奏の前には声もでない。何という!!ツィピーヌは確か小澤征爾がブザンソン指揮者コンクールで審査をした人ではなかったか・・・。これはうろ覚えだが。しかしこんなに良い指揮者だとは知らなかった。細部に至るまでフレーズが生き生きとした抑揚を持ち、この世紀の名曲の演奏に関われることへの感謝に満ちているとしか言いようがない。クリスマス・キャロルのコラージュに彩られた合唱の美しいこと!!そしてコラールの一節が高らかに歌われるフィナーレでは胸が熱くなってしまった。それでいて、響きはあくまで軽く、反応がとても良い。 デュリュフレのオルガンに乗って歌うピエール・モレには心から讃辞を捧げたい。少年合唱のピッチも満足できるし、オケは最盛期のパリ音楽院管弦楽団である。そしてオネゲルの作品を生涯にわたって積極的に取り上げ続けたフランスの指揮者が、心を込めて演奏しているのだから、悪いはずがない。 たった1500円でおつりが来た。とんでもないことだ。これにオラトリオ「世界の叫び」、そして戦中にオネゲルがスイスのために書き上げた劇的物語「ニコラ・ド・フリュー」、そしておなじみの「機関車パシフィック231」や 「ラグビー」の名演がついてくるのだ。「機関車パシフィック231」はモノラルながら第1にあげるべき名演だろう。スコアを改めて見直してしまった。なるほどこういうリズムの重なりだったのかとか、色んなオネゲルの仕掛けが浮き出てくるような理知的でいて音楽的な演奏だ。このバランスから生まれる精緻な演奏は得難いものである。「ラグビー」も同じ。 昨日買ってきたばかりなので、何度か聞いてもう一度レビューを書いておきたい。今は興奮してちゃんと書けそうもない。しかし、何としてでもここで取り上げておきたいと思った。買い逃してはならない。絶対に手に入れるべき名盤!! EMI/7243 5 86477 2 3
by Schweizer_Musik
| 2005-03-11 07:14
| CD試聴記
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