チャイコフスキーの悲愴 バーンスタインの旧盤を聞く
作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名  : 交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」Op.74 (1893)
演奏者 : レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
CD番号 : SONY/30DC 355

ずいぶん古いCDで恐縮である。もちろんこのCDはとっくの昔に廃盤であろうが、再発されて今も手にはいるのかどうかはちょっと調べてみたけれど、不明だった。
1964年2月11日ニューヨーク録音のこの録音は、後にグラモフォンに入れ直したものに比べて私ははるかに気に入っている。グラモフォン盤のテンポにちょっとついていけないままである。その内聞き直してみようかと思ってはいるが…。
若いバーンスタインのこの録音。今はお気に入りとなったフォステックスのヘッドフォンで聞いているが、とても良い録音で、解像度も素晴らしい。演奏ノイズ(パート譜をめくる音など)も盛大に入っていることも付記しておく。

第1楽章からバーンスタインの解釈は奇抜なところは全くなく、正攻法そのものだ。ニューヨーク・フィルハーモニックを存分に鳴らしているが、ロシアのスヴェトラーノフなどの演奏のように沈没しそうなほどのロマンの海に漂うようなところはなく、筋肉質のマッチョなチャイコフスキーとなっている。
だから、第3楽章は最高の出来だし、終楽章もベタベタにならない。ニューヨーク・フィルと言えば、彼以降、ロクな評判を聞かなかったけれど、その時にいつもついて回るのは、個々の奏者のポテンシャルはとても高いのだが…という一節であった。
なるほど、こんな演奏ができるオケなのだということと、バーンスタインというとてつもないスターの後は誰がなっても比べられ、徹底的にけなされるということなのだろう。
そう言えば、未だにスイス・ロマンド管弦楽団にエルネスト・アンセルメの幻を見ようとしているのが日本の音楽ファンではないだろうか?サヴァリッシュやシュタインがあそこのシェフになっていた時代は、滅多に日本に紹介されず、満を持してアルミン・ジョルダンがなった時にマーラーをレパートリーに加えただけで、あーだこーだと言われ、その後任のファビオ・ルイジなども日本公演ではエルネスト・アンセルメで知られているレパートリーをプロモーターから要求されたそうだ。
話が横道に逸れてしまった。

終楽章で彼はホントに男泣きに世界を歌い上げる。迫真の演奏だ。シンフォニックで極めて力強い音楽の運びである。
そして、有名な銅鑼の音の後の静寂に世界は特に印象的。畳みかけるような展開の後だけにその強い対比が胸に突き刺さる。
この頃のバーンスタインの録音ってハズレがないなぁとつくづく思った次第である。
by Schweizer_Musik | 2009-01-29 22:54 | CD試聴記
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