ベーム指揮ウィーン響によるモノラル録音のベートーヴェン第九
作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名  : 交響曲 第9番 ニ短調「合唱」Op.125 (1822-24)
演奏者 : カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団, ウィーン国立歌劇場合唱団, テレサ・シュティッヒ=ランダル(sop), ヒルデ・レッセル=マイダン(alto), アントン・デルモータ(ten), パウル・シェフラー(bs)
CD番号 : PHILIPS/442 732-2

カール・ベームが亡くなってもう何年になるのだろう。光陰矢のごとしとは言うが、彼が亡くなってすでに28年…。現役で彼の新譜を聞いてきた世代(とても新譜を買えるほど裕福な家ではなかったけれど…)としては、ちょっと寂しい気がする。
昔、ウィーンに滞在していた時、訪れたホイリゲにシュトルツやベームの写真が飾ってあったことを思い出した。あの町では今もアイドルなのだろうか?
このウィーン交響楽団を指揮したベートーヴェンの第9は、同じ頃に録音されたモーツァルトのレクイエムとともに、その昔、とてもよく聞いた演奏だった。廉価盤で聞けるベームはこれだけだったからだ。その後、グラモフォンからも古い録音がいくつか廉価盤で出て、レパートリーも増えていったけれど、高校生の頃、この第九は小澤征爾がニュー・フィルハーモニア管を指揮したものを買う前の、私のとっておきの一枚だった。
世評の高いフルトヴェングラーのバイロイト祝祭盤は4楽章の合唱が何を言っているのかさっぱりわからないもので、何故みんながあれを一番にあげるのか、当時の謎だったものである(笑)。
モツレクはワルターの廉価盤がソニーから出ていて、愛聴していた。ワルターの伸びやかなカンタービレが効いた演奏に対して、ベームのはもっと質実剛健、力強いものだった。
ウィーン交響楽団?どうしてウィーン・フィルでないの?などと言うなかれ!!1948年から1960年まで、このオケの実質的なシェフは帝王カラヤンだったのだ。だからスヴャトスラフ・リヒテルとのチャイコフスキーの協奏曲やシューマンの交響曲第4番の映像でこのオケが出ていたのだ。
カラヤンの後任はウォルフガング・サヴァリッシュで、そのあとヨーゼフ・クリップス、そしてカルロ・マリア・ジュリーニがシェフとして采配をふるっている。ベームが指揮してこれらベートーヴェンやモーツァルトを録音した頃は、カラヤンが頻繁に指揮をしていた頃のことである。
ウィーン・フィルが言うなればウィーン国立歌劇場のメンバーのアルバイトであるのに対して、こちらはウィーンの職業オケであるという誇りがあるように思う。そしてそのアンサンブルは素晴らしいもので、この1950年代から1960年代にかけては最高の時代だったのかも知れない。
ジュリーニがウィーン交響楽団と来日した時、私は大阪フェスティバル・ホールで1975年の9月に聞いている。高校生の頃だった。この年、六月頃だったけれどムラヴィンスキーとレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(現在のサンクト・ペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団や、小澤征爾指揮サンフランシスコ交響楽団など、今も思い出に残る演奏会に行っていた頃の事だった。
ウェーベルンのパッサカリアが最初で、実はこれに私は腰が抜けるほど感動してしまった。後は何をやったのかさっぱり憶えていない。凄い演奏だったし、ウェーベルンという作曲家をこれで知ったのだった。
ウィーン・フィルが良くないなどとわけのわからないことを書く気はないが、ウィーン交響楽団を侮ってはならないと思うのだ。

うだうだ書いてはみたが、やはり久しぶりに聞くカール・ベーム指揮ウィーン交響楽団の第九は完璧の出来映えだった。歌手の名前だけでも、当時のウィーン国立歌劇場の花形スターたちが勢揃いしている凄さ!!ウィーン交響楽団の力の入った演奏ぶりに、またしても魅せられてしまった。
後に彼はウィーン・フィルと二度録音しているが、この演奏の水準のものはとうとう残せなかったと思う。第2楽章スケルツォの力強い音楽の運びは、余程のことがないと難しいのではないだろうか?合唱は、今となっては日本の合唱団の方が上手いと思わせる部分もあるけれど(あれだけ毎年やっているのだから…)、この演奏で聞かせるウィーン国立歌劇場合唱団もまた見事だ。
モノラルでなければ、一番にあげる演奏なのだけれど…。でも、フルトヴェングラーとバイロイト祝祭のCDを薦めるよりも、このCDを薦める方がずっと良心的だと思う。
オルフェオが新しいマスターから復刻するまでは、私はあれは商品化できるような代物(第4楽章を指します)とは言えないと信じていたが、それでもまだあれをフルトヴェングラーの最高の演奏(かも知れないけれど)とするよりも、ルツェルン音楽祭の最晩年の録音をあげる方が良心的だと思う。
先日、またまた欺されて…伊EMIの全集を買ってしまうという愚かなことをしてしまったけれど、この第九遍歴はそろそろ止めないと…。

追記
昔聞いたカール・ベームの演奏で、コンセルトヘボウ管を指揮したモーツァルトの最後の3曲の交響曲に、コロンビアから出ていた古いアイネ・クライネ…などもあったことを思い出した。
ベルリン・フィルを指揮したモーツァルトの交響曲全集を聞くことが出来たのは、福岡の今はもうない文化堂とで手に入れた中古のレコードで、すでに就職していた。
その後、マリナーの全集を手に入れて、もっぱらそればかり聞くようになってしまったけれど…。
by Schweizer_Musik | 2009-03-06 13:43 | CD試聴記
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