オーケストレーションの妙技 -01. チャイコフスキーの組曲「白鳥の湖」
チャイコフスキーの組曲「白鳥の湖」のスコアは、中学生の時に買った数冊のスコアの一つだった。以来、大学時代まで、私のオーケストレーションのバイブルとなった。これと同じ作曲家のヴァイオリン協奏曲の2曲のスコアが私のオーケストレーションの原点である。
今は滅多に開くこともなくなったスコアであるが、ちょっと開いてみて、その作品について少し書いてみようと思った。大体チャイコフスキーのスコアについてあまり書いたものを見かけないので、珍しいかもしれない。
スコアは、当時買った音楽之友社の組曲版のポケット・スコアを使う。(1952年刊)

第1曲「情景」は第2幕の冒頭で演奏される音楽である。古い私のスコアの解説には第1幕の終わりと書いてある。そういう版があるのかどうかは知らないが、ともかく、全曲盤のどれを聞いても第2幕の音楽として紹介されているので、間違いないだろう。
構成はA(a-b) - A'(a-b-c) - Coda
単純な二部形式の音楽であるが、A'の後半が三連符で扇情的に盛り上がり、Cadaで最初のテーマがfffで強奏された後、ディミヌエンドして消え入るように終わる。
3分弱のこの音楽を有名にしているのは、やはり冒頭のオーボエのメロディーであろう。
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オーボエのソロによるあまりにも有名な部分はハープのアルペジオとともに、上のような弦のトレモロによって伴奏される。時折チェロとコンバスのピツィカートがついているだけで、ハープが印象に残るが、密集位置でならされる弦のトレモロが背景にとけ込むことで、オーボエの抒情的なメロディーをこれでもかというほどもり立てていく。
チャイコフスキーの音楽はバスの順次進行が特徴で、多くがこのバスの順次進行が現れ、それがメロディーと反進行することで、音楽に動きを自然ともたらしている。
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A'はホルン4本でのテーマ吹奏で始まる。
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内声にメロディーを持ってきたので、メロディーが行方不明にならないためにもホルンは4本必要だったのだが、オケの指揮者も、フォルテと書かれてあっても同じようにフォルテで演奏したりしない。ここはちょっと注意が必要だが、そんなことはオケが先刻ご承知であろう。
更に木管が和音を刻み、ヴァイオリンとヴィオラがオクターブの幅広い響きでメロディーを雄大に演奏するところは次のように書かれている。
最初の小節以外は、交差法によっている。フルートは音域が高いので、そのままにしてあるが、ob-cl-ob-clというようにより音がよくブレンドされるように書かれてあることに注意し、原譜のスコアにあたってほしい。
もう一つ、ファゴットがチェロとコンバスのピツィカートのバスに二分音符で重ねられている。ピツィカートの起ち上がりが速く、急激な減衰音で、ファゴットのバスを明瞭な音色へと変化させている。
バスを聞かせるだけなら、バス・トロンボーンとチューバが編成の中にあるので、使えばいいのだが、それでは音が重くなってしまうし、コーダでの盛り上がりが惚けてしまう。色々な配慮がここに詰まっていると私は思う。
支えの和音がホルンに置かれ、三連符で刻まれる和音とメロディーが同じ音域であるが、リズムで区分されるので、メロディーが行方不明になるようなことはない。
この後、四分音符の三連符で盛り上げるところにははじめてバス・トロンボーンやチューバが活躍するが、バランスはこの延長にある。
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続くPiu mossoのコーダもトゥッティの書き方としては学生諸氏には参考になろうと思うが、今回はこのくらいにしておこう。
by Schweizer_Musik | 2009-11-27 11:59 | 授業のための覚え書き
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