作曲者 : SCHUMANN, Robert Alexander 1810-1856 独
曲名 : ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54 (1841/45) 演奏者 : ディヌ・リパッティ(pf), エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 CD番号 : DECCA/480 0078 カラヤンとのスタジオ録音がやたらと有名であるが、1950年2月に録音されたこの演奏の価値は勝るとも劣らないものである。チューリッヒでのショパンのコンサート(協奏曲の録音が残された!!)の後、ジュネーヴに戻ってのこの録音は、カラヤンとのものより更にファンタジックでとても美しい。 スタジオ録音に近い環境で、おそらくは一発録りであったろうが、そうしたことはちょっとしたミスなどからも想像がつく。しかしそんなことなど大したことではない。この演奏の恐るべき深さ、潔さは希有なことであり、奇跡と呼んでもよいのではないか? アンセルメは職人的手際の良さとソリストへの深い敬意でもって注意深く合わせている。ハスキルとの録音でも感じたことであるが、リパッティとの録音の方がまとまりが良い。録音はさすがにカラヤンとのEMI盤が良いが、鑑賞にはなんとか耐えうる水準は維持している。 ところで、先日、sogeさんのご厚意でフランソワがシャルル・ミュンシュと共演したこのシューマンの協奏曲を聞かせていただいたが、あの奔放な演奏もまた魅力的だが、このリパッティの演奏はそれと対極にあるような演奏である。そしてそのどちらもがこの作品の最高の演奏となったのは面白い。 音楽の表現とはこれほどにまで多様でありうるのである。 ただ一枚、この曲の演奏を推薦するとしたら、私は躊躇なくルプーの演奏をお薦めするだろう。彼がレコード産業と手を切ってしまってもう何年になるのだろう。
by Schweizer_Musik
| 2009-12-12 22:34
| CD試聴記
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