庄司紗矢香が弾くプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番
作曲者 : PROKOFIEV, Sergei 1891-1953 露
曲名  : ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ長調 Op.94a (1943)
演奏者 : 庄司紗矢香(vn), イタマール・ゴラン(pf)
CD番号 : Grammophon/UCCG1183

この天才は留まるところを知らない。この高みに達したヴァイオリニストはもうほんとに数えるほどしかいないのでは?
もともとはフルート・ソナタであったものを、ヴァイオリン用に改作したもので、フルート・ソナタとしてはもとはあまり好評でなかったようだが、ヴァイオリン用に改作を名ヴァイオリニストのダヴィド・オイストラフが熱心に勧めたことから、プロコフィエフが自身で改訂して、こちらは多くのヴァイオリニストがレパートリーにいれることとなった。
そのため、フルート版もこのヴァイオリン用の改訂を参考に初稿から変更して演奏されることが今では一般的に行われているというが、その辺りは楽譜にあたっているわけではない私にはよくわからない。
戦時下に書かれたこの作品は、終戦に近い1944年に初演されている。初演はダヴィド・オイストラフとレフ・オボーリンによって行われたが、献呈は作曲者が尊敬して止まなかったというヨーゼフ・シゲティであった。

この曲の激しさは独特である。第1楽章こそ穏やかに始まるが、次第に緊張感を漂わせ、極限まで高められたところで第2楽章に入り、哄笑、高笑い、嘲り、謗り、裏切り、慰め、愛情…様々な感情が渦巻く強烈な音楽が繰り広げられるのである。いつ聞いても刺激を受けるが、この庄司紗矢香の演奏はおそらくダヴィド・オイストラフやナタン・ミルシテイン、ヨーゼフ・シゲティなどとは違うやり方で、そして同じ高みに達した希有な名演だと思う。
これを聞かなかったら、古いヨーゼフ・シゲティの演奏を聴き直したりしなかっただろう。実は先週の金曜日、授業でフルートを専攻しているT君が卒業試験でこの曲のフルート版を吹くので聞かせてほしいと言ってきたので、マイセンのフルートの演奏をサワリだけだが、聞いてふとこんな曲だったけ…などと思い、この庄司紗矢香の演奏を聞いてみた次第で、続いてヨーゼフ・シゲティとバルサムの録音、ナタン・ミルシテインとバルサムの録音、初演者のダヴィド・オイストラフの古い録音などを引っ張り出してみた。(クレメルとアルゲリッチの録音は手元に見つからなかった。またどこかに持っていたはずのジェームズ・ゴールウェイとアルゲリッチの録音も…残念)
それで、今、もう一度庄司紗矢香の演奏を聞き、先日聞いたパリのルーヴルでのライブ録音の凄さを思い出しつつ、この天才は一体どこまで伸びていくのだろうと空恐ろしくも感じた。
全曲を貫く緊張感は絶大で、これ以上の演奏をするのは庄司紗矢香以外にはもういないだろう。いや名演である。
二度目を聞き終えて、もう言葉がない。ただ感動…。
by Schweizer_Musik | 2009-12-22 08:15 | CD試聴記
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