作曲者 : PROKOFIEV, Sergei 1891-1953 露
曲名 : 交響曲 第5番 変ロ長調 Op.100 (1944) 演奏者 : パウル・クレツキ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 CD番号 : EMI/5 74115 2 色々とこの曲の録音を聞いてきたけれど、これは文句なしの第1位である。最近この演奏の存在を知り、某オークションで落としたものである。ムラヴィンスキーやラインスドルフ、カラヤン、ジョージ・セルといった名演がひしめき合う状態で、最近ではキタエンコの全集録音などもあり、心は動くし、ライブ盤まで入れれば、この曲の録音を私は一体何枚持っているのだろう…。でもそれらを捨てても、この一枚があれば良い。そんな凄い演奏なのだ。 1964年の録音という。戦争中、様々な悲劇に見舞われ、彼は作曲家としてのキャリアを中断している。ちょうどその頃に書かれたプロコフィエフの作品を、クレツキは強烈な思い入れで演奏している。 冒頭から何事かと思うほどの入れ込みようで、クレツキは指揮をしている。そしてフィルハーモニア管弦楽団も真剣勝負の集中力でこれに応えている。これこそ一期一会の強烈な演奏である。私は、第1楽章を聞き始めたらもう途中で止められなくなり、一気に終楽章まで聞き通し、途中何もできず…であった。茫然自失…。 その昔、オーマンディ指揮でこの曲をはじめて聞いた。(私はこの曲と実に幸せな出会いを果たしている…と今も信じている)その時は、この作品をパストラルな平和な音楽だと思っていた。 戦争中にプロコフィエフは疎開していたから、そんな平和な音楽を書いたのだ…と、勝手に解釈していた。オーマンディが悪いのではないが、私はずいぶん誤解していたように思う。クレツキ指揮のこの演奏で聞第2楽章の緊迫感あふれる音楽は、私のそんな悠長な考えを粉々に砕いてしまった。 プロコフィエフの完璧なオーケストレーションは、クレツキのような音楽家によってこそ完璧なバランスで鳴り響くのだと思い知る。ピアノを重ねたバスーンの音も、暗い響きに鋭さを加えている。 第3楽章はシェークスピアの悲劇の音楽である。オテロのデスデモーナ、あるいはオフェーリアが自らの葬送の調べを歌い上げる…聞きながら私はそんな幻想にとらわれてしまった。 対立する様々な感情がぶつかり合う終楽章は、この演奏を聞いてはじめて納得がいった。これでないといけないのだ。クラリネットの軽快な歌がこれほどの重みを背景に持っていたとは!! 全てにわたって絶品。聞かないと損だ。私は今までずいぶん損をして来た気がしてならない。今から取り返さないと…(笑)。 ても、あまりに重い音楽なので、そうそう聞くのは勘弁してもらわないといけない。だが、もう他の演奏は聞けなくなってしまった。 絶賛!!いつまでもいつまでも拍手!!
by Schweizer_Musik
| 2009-12-26 08:36
| CD試聴記
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