スウィトナー指揮で聞くブルックナーの五番
作曲者 : BRUCKNER, Anton 1824-1896 オーストリア
曲名  : 交響曲 第5番 変ロ長調 WAB.105 (1875〜78/ノヴァーク版)
演奏者 : オトマール・スウィトナー指揮 ベルリン・シュターツカペレ
CD番号 : DS/TKCC-30225

NHK交響楽団での名演が懐かしい、オトマール・スウィトナー氏が亡くなられた。私は彼の指揮したものをずいぶんたくさん聞き、感動してきたので、その死があまり現実感がなく、不思議な気がしてならない。
昨年、彼の近況を伝えるテレビを見たけれど、元気な様子に、もう一度振れば良いのに…などと思ったけれど、亡くなるとは…。
私にとって彼はモーツァルトの指揮者として現れ、その清新な演奏と、ドレスデン・シュターツカペレの美しい響きで強い印象を持っている。
ドレスデンを辞めて移ったベルリン・シュターツカペレで、彼はドレスデンのような素晴らしい響きを作り出した。この演奏はそういう彼の最高の遺産の一つだと思う。
第1楽章から茫漠としたブルックナー演奏に慣れた、寝ぼけた耳を覚醒させるシンフォニックで引き締まった響きが突き抜けていく。希有なワン・バターン男だったブルックナーの音楽は、どうかすると寝ぼけた演奏が変にもてはやされる傾向があるけれど、こういう引き締まったテンポと細かな仕上がり感で聞くとまた一層に作品の核心に迫るような気がして良いなぁと思う。
第2楽章は同じ曲かと思うほど速い!!私はベルナルト・ハイティンクの旧盤か、オイゲン・ヨッフムのコンセルトヘボウ管とのライブ盤(PHILIPS)で聞くことが多いけれど、それらとは全く別の曲となっている。はじめて聞いた時は驚いたけれど、慣れるとこれがとても良い感じで、見通しの良さが抜群なのだ。ちょっとゆったり目のスケルツォという感じの演奏は、ユニーク極まる。このテンポで次の第3楽章に入ると、冒頭の動機の意味がとても分かりやすい。これはユニークで説得力のある解釈だと私は思う。
第3楽章は逆に遅めのテンポをとるので、第2、第3楽章は対比よりも対となった2つの兄弟のような楽章となるのだ。
終楽章はノーマルなテンポなのだが、サウンドが引き締まっていて心地よい。オケの能力の高さは想像を絶するもので、ベルリン・シュターツカペレが彼の元でいかに素晴らしいオーケストラとなっていたかがよくわかる。
これほどの指揮者だったのに、東ドイツを中心に活躍したことで、メジャー・レーベルへの録音が少ないために過小評価されているような気がする。
彼が残したもの、あの美しいモーツァルトのシンフォニーやオペラの数々をこれからも私は愛し続けるだろうと思う。天国に旅立たれたオトマール・スウィトナー氏に今はただただ感謝!である。
by Schweizer_Musik | 2010-01-24 04:24 | CD試聴記
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