フックスのピアノ四重奏曲 第1番
作曲者 : FUCHS, Robert 1847ー1927 オーストリア
曲名  : ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.15 (1876)
演奏者 : オリヴァー・トリエンドル(pf), アドリヤン三重奏団【ガブリエル・アドリヤン(vn), ウォルフガング・トルック(va), デイヴィッド・アドリアン(vc)】
CD番号 : Thorofon/CTH2454

ローベルト・フックスは19世紀末にウィーン音楽院の教授で、弟子にはマーラーやツェムリンスキー、フーゴ・ヴォルフなどがいる大御所で、ブラームスが高く評価していた作曲家でもある。ブラームスより14才年下で、長寿を全うし、多くの要職にもついていたが、保守的な作風から死後、次第に忘れられていったのは残念だ。この作品は二十代最後の頃の作品であるが、主題の選び方、その展開の方法、特に和音の選択は実に洗練されている。
ロマン派の申し子のような作品なのだ。ただ、派手な技巧を披露するところなどには欠けるので、地味な印象を持たれてしまったのが、忘れられて行った原因なのかも知れないが、捨て去るにはあまりに美しい音楽で、こうしていつでも聞けるようにしておいてほしいものだと、つくづく思う。
演奏は可もなく不可もなしといった塩梅で、丁寧だが大人しすぎるかなとも思った。もっと表情を大きくとった方が印象深かったかもしれない。惜しいところではある。あまり演奏されない音楽を引っ張り出して、こうして録音するのは大変な作業であるとは思うが、もっと曲に深く切り込んでいって欲しいとも思う。
とは言え、知られざる作品の紹介としては大変質も高く、ロマン派の音楽を愛する人にはぜひ一聴をお薦めしたい知られざる名品である。

写真はチューリッヒのリマト川の夕日。
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by Schweizer_Musik | 2010-03-15 21:51 | CD試聴記
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