バルトークのピアノ協奏曲第三番より
作曲者 : BARTÓK, Béla 1881-1945 ハンガリー→米
曲名  : ピアノ協奏曲 第3番 Sz119 (1945) 〜 第2楽章 Adagio religioso
演奏者 : ディヌ・リパッティ(pf), パウル・ザッヒャー指揮 南西ドイツ放送交響楽団
CD番号 : archiphon/ARC-112〜113

リパッティのこの録音が発見された時は驚いた。もう残っていないと思われていたからだ。1948年5月の録音だが、この楽章だけがこのCDに収録されていて、それもステレオ・プレゼンスがついているのにも驚いた。
いやそれ以上にこの録音の状態が良いのだ。ノイズは確かにのっているが、彼のタッチの美しさがこれほどはっきりわかるものは、1950年2月にチューリッヒ・トーンハレで録音されたショパンの2曲のエチュードくらいだ。それもEMIなどの復刻は酷いもので、このarchiphon盤のみ良いのだから悩ましい。一体原盤は何だったのか?
同じことは昔、ショパンの協奏曲でも経験した。EMIの復刻したアッカーマンと晩年の二月に録音したというそれは、Jecklinの出した録音と同じソースのはずなのに全く違っていたからだ。
EMI盤を聞いて、聞くに耐えない録音と思った人も多いのではないだろうか?私もそう思っていた。偶然手にとって聞くことができた幸運によって、EMIの復刻は原盤が違うのではという疑念を生じさせるほど劇的にJecklin盤は良い状態であったのだ。

リパッティの弾くこの曲の全曲の録音はこちらでダウンロードできるし、モノラルながらこちらが多分元のソースだろうと思われるが、archiphon盤のステレオ・プレゼンスは自然ついていて、大変聞きやすい。全曲でないのが残念だと思わせるほどだ。

もうリパッティの録音はないのだろうが、彼の演奏会のリストを見ているとラヴェルのピアノ協奏曲(なんと1947年にエドゥアルト・ヴァン・ベイヌム指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とも共演していて、この時のバッハの録音は存在しCD化されている)やフランク・マルタンのバラード(三回演奏していていずれもアンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団と共演)などがある。ベートーヴェンの「皇帝」も2回演奏しているがスイス亡命の直前のルーマニアでの演奏なので、録音は残っていないのだろう。
モーツァルトのニ短調協奏曲(K466)は得意としていたようで、1947年のルツェルン音楽祭でヒンデミット指揮で演奏している。この時のヒンデミットの指揮が例によって例のごとく…だったそうで、オケはもの凄い集中力で演奏し、結果的にこの年の音楽祭で最高の演奏会となったとの新聞などの評価だったそうな…。ああ録音が残っていないのだろうか?
1936年にルーマニアで演奏した(ジョルジュスク指揮)ストラヴィンスキーの「カプリッチオ」はいくらなんでも無理だろうけれど、ハイドンのニ長調の協奏曲(Hob.III-11)は戦後のあちこちで演奏しているのだから、残っている可能性も…ああやっぱりはかない望みなのだろう…。

こんなことをライナー・ノートを見ながらつらつらと考えていた。そろそろ仕事にかかります!!
写真はソーリオの水場を撮ったもの。古いことがそのまま良いこととは言わないけれど、ここでは人の営為の積み重ねの重みと深さを感じるのだ。遠くシオーラの山並みが永遠に繋がっているように思えてならない。
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by Schweizer_Musik | 2010-04-12 08:08 | CD試聴記
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