ルービンシュタインの弾くチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番
作曲者 : TCHAIKOVSKY, Pyotr Il'yich 1840-1893 露
曲名  : ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23 (1874-75/79,88改訂)
演奏者 : アルトゥール・ルービンシュタイン(pf), エーリヒ・ラインスドルフ指揮 ボストン交響楽団
CD番号 : RCA/RCCD-1052

CD番号のとおり、これはCDが出始めた頃に買った一枚。まだ私は福岡の久留米に住んでいた。CD初期盤にしてはなかなか良い復刻だと思うけれど、今となってはやや古びた気もしないでもない。でもLPで聞いていた頃のことを思えばこの解像度はやはりなかなか…と思う。
とは言え、この曲の第1の名演としてこれをあける人は、今でもいるのだろうか?マルタ・アルゲリッチのように髪振り乱し…という熱演で冒頭を弾ききる人が多い反面、主部に入るとつまらなくなってしまう場合が多く、最近の録音であまり満足しない私は、リヒテルやこのルービンシュタインの演奏を聞き続けている。望むべくもないがラドゥ・ルプーがこれをやったらどうだろう…。
よく知られるようにこの曲はアントン・ルービンシュタイン(紛らわしくて申し訳ない…→ご指摘のようにこれはニコライ・ルービンシュタイン!!アントンではない…)に献呈しようとして酷評されてしまう。その後、チャイコフスキーは改訂をするのだが、初期稿をラザール・ベルマンが録音してくれていて(テルミカーノフ指揮)、それを聞くと冒頭の有名なピアノの出だしがアルペジオで優雅に始まることに驚く。
この曲の序奏がやたらと有名だけれど、多くの演奏がやっているように勇壮な出だしではなく、優雅にでるのがチャイコフスキーの最初の考えだった。
その後、現在の形に直されるのだけれど、この最初の優雅さを保っているのがアルトゥール・ルービンシュタインのこの演奏だと思う。彼は明らかに主部に重点をしぼっている。だから変ロ短調の主部に入ってからの充実度は凄まじいのだ。
ありきたりの演奏ではない。ラインスドルフの作り出す厳しい響きに呼応するアルトゥール・ルービンシュタインのピアノは強靱にして柔らかな響きを持っている。
そう、これに対比するかのように冒頭が書かれていたのである。あまりに勇壮に序奏を演奏し過ぎると、ホントの主部がただただ長ったらしい音楽になってしまうのだ。この点でアルトゥール・ルービンシュタインは極めて明快で音楽の本質をまっすぐに突いているように思われる。
第2楽章以下の充実ぶりも素晴らしく、この演奏が古びて感じられるところはない。名曲故に、名演に事欠かない。リヒテルの名演やマルタ・アルゲリッチの私の好みとは違うけれど素晴らしい演奏もある。ラザール・ベルマンの初稿の録音も貴重だ。だが、このルービンシュタイン盤が色あせることはないと思う。
まだお聞きでない方は一度お試しあれ!!ラインスドルフが振るボストン交響楽団もなかなかいける!!

写真はルガーノ近郊の小さな村モルコーテの路地。なんとなく良い感じでしょ?
ルービンシュタインの弾くチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番_c0042908_985155.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-04-26 09:09 | CD試聴記
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