カーゾンとブリテンによるモーツァルトのニ短調 K.466
作曲者 : MOZART, Wolfgang Amadeus 1756-1791 オーストリア
曲名  : ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466 (1785)
演奏者 : クリフォード・カーゾン(pf), ベンジャミン・ブリテン指揮 イギリス室内管弦楽団
CD番号 : DECCA/F35L-50368





この曲は名演があまりに多く、いずれも捨てがたく思う。クララ・ハスキルのヴィンタートゥーアでの録音やマルケヴィッチとのステレオ録音、あるいはドゥラ・ブルッショルリがベルンハルト・パウムガルトナー教授といれた一枚。ラローチャがコリン・デイヴィスと入れた録音、ルフェヴールとフルトヴェングラーのルガーノでのライブ録音、更にゲザ・アンダの弾き振りでの全集録音からのものやグルダのグラモフォン録音にリリー・クラウスがボスコフスキーの指揮で入れた古い録音やブルーノ・ワルターの弾き振りもあった。ちょっと思い起こすだけでもこんなに出てくるのだから、家にあるものを全部出していたら大変なことになりそうだ。アニー・フィッシャーも良かったなどと、またまた思い出してしまった…。これではどうしようもない。

カーゾンはそうした名盤の中の一枚である。更に飛び切りの一枚と言っても良い。ロマンチックなブリテンの指揮(決して崩れないが…)ダイナミックなカーゾンのピアノ。ベートーヴェン作のカデンツァも含め、このダイナミックで立体的とも言っていいだろう様々な音色の変化と強弱のバランスによる遠近感のあるピアノ演奏は、クララ・ハスキルなどの名演に決して劣ることはない。
それにブリテンの指揮のなんと見事なことか!!乾燥したフレージングでカリカリにやせ細ったモーツァルトを当時のスタイルであると主張して聞かされるという「難行苦行」を強いられることが多い昨今、こうした豊かな響き、おおらかで品のあるフレージングに出会うことは希有なこととなってしまった。
作曲家の作品を身勝手に解釈することと、作曲者の音に戻すということは同義ではないはずなのだが…。ロマンの鎧を着たこの演奏の方が、まだずっとモーツァルトの書いたものに近い気が、私にはしている。間違っているだろうか?
一言で言うならば、音楽的!なのだ。伸び伸びと息をし(フレージング)、伸び伸びと歌う(カンタービレ)。これこそモーツァルトだと私は思う。

写真は私が愛してやまないミューレンの早朝の風景。
カーゾンとブリテンによるモーツァルトのニ短調 K.466_c0042908_9103067.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-05-15 09:10 | CD試聴記
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