ボッシのレクイエムを聞く
作曲者 : BOSSI, Marco Enrico 1861-1925 伊
曲名  : 死者のためのミサ曲 "Missa Pro Defunctis" Op.83 (1893/1906)
演奏者 : ピエル・パオロ・スカットリン指揮 ボローニャ・エウリディーチェ合唱団, アンドレア・マチナンティ(org)
CD番号 : TACTUS/TC 862702



義母の葬儀を終え、遺体を荼毘に付し、お骨あげも終えて、あっけなく一日で終わってしまった。大阪から私の両親と姉もかけつけ、あわただしく帰って行ったが、それもこれもなんとなくあまりにあっけなくて、とても本当のことのように思えない感じがつきまとう。不思議な印象である。
浄土真宗の通夜であり、葬式であったためだろうか、どこか明るく、ジメジメとしないところもあったからかも知れないが、そうした宗教とは関係なく、カトリックの名作を聞いて一日を終えたい。

ボッシをどれだけの人が知っているか知らないけれど、友人の指揮者シュヴァイツェル氏のCDで彼の作品と出会い、以来、ちょくちょく聞くようになった19世紀のイタリアのこの作曲家は、晩年にファシスト党の党員となったことが災いし、戦後は忘れられていたと聞くが、本当かどうかよく知らない。
そんな話はピツェッティでもあったが、彼は第二次大戦中にファシスト党と近い関係にあったことは知られていて、それと混同されているだけなのかも知れない。
そんなことはともかくとして、この敬虔な祈りの音楽はやり真実の歌であると思う。オルガニストとして活躍したボッシのオルガン音楽もおさめられているが、それらも極めて優れているし、このレクイエムは彼が様々ななジャンルで極めて優れた作曲家であったことを示している。
フランスでは印象派が台頭し始めた時期、イタリアではバロック以前の音楽への回帰が始まっていた。そしてこの路線からレスピーギが、ニーノ・ロータが生まれたのである。そしてピツェッティも…。
戦後のイタリアの前衛音楽があれほど激烈であったのは、そうした路線への感情的な反発もあったのではないだろうか?それもこれもこのボッシの音楽が起点だったのでは…。そんな気がしている。

曲の中心は第3曲「怒りの日」であろうが、曲はオルガンの伴奏のみの混声合唱で、かなり古風な作風で貫かれている。
楽章構成は伝統的なものであるが、アニュス・デイ、ルックス・エテルナが終わった後にResponsoriumがあり、更にその感を強くする。

ルネッサンスの音楽とバロックの音楽の様式が融合し、それにちょっとだけハーモニー的にロマン派後期が混ざったボッシの音楽は、他のロマン派の音楽から聞くことの出来ない清浄さに満ちている。きっと西方浄土にはこんな音楽が流れているのだろう。(それにしてはちょっと現世的すぎる?…笑)

写真はハイリゲンブルートの教会とオーストリア最高峰グロスグロックナー。何度か貼り付けたことがあるのでちょっと恥ずかしいのだけれど、私の自慢の一枚なので…(笑)
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by Schweizer_Musik | 2010-06-29 18:24 | CD試聴記
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