ファリャの「恋は魔術師」をライナーの指揮で聞く
作曲者 : FALLA, Manuel de 1876-1946 スペイン
曲名  : バレエ組曲「恋は魔術師 "El Amor Brujo"」(1914/1924年改訂第2版)
演奏者 : フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団, レオンタイン・プライス(sop)
CD番号 : BMG/BVCC37494



朝から、再び「風の変容」の細かな改訂を行う。冒頭をもう少しシャープにしてみたり、ちょっとした音を加えたり、消したり…。ミスもまだ見つかるので、それを探す作業も大変だスコアをプリントして見直すのが結局一番効率的なので、それを朝からずっとやっていたが、ちょっと一休みでファリャの「恋は魔術師」を聞いて気分転換をする。

この魅力あふれるスコアは、もともと室内管弦楽編成であったという。1925年に改訂されて、変則二管編成となったが、この編成でこれほどまでに充実した響きを得られるとはまるで奇跡のような作品である。
フルート2(ピッコロ1持ち替え)、オーボエ1、クラリネット2、ファゴット1、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、鐘、ピアノ、独唱という編成は、いつも私がやらされている上福岡フィルハーモニーの編成そのものである。ベルとピアノと歌が入れば、あのオケでもほぼ可能なはずだが、ちょっと難しすぎるかなぁ…(笑)。

歌がまたスペイン、フラメンコのカンテを思い出せ、音だけ聞いていてもそこにバイラオーラがいるような気になってしまうから凄い。この見事なスコアをライナーがスーパー・オケであるシカゴ交響楽団とソプラノのレオンタイン・プライスと録音したものは、この曲の最高の録音の一つだろう。
ライナーは全く余計なことをしないので私はとても好きな指揮者の一人である。彼の指揮したものはスコアに書いてあるものそのものであり、「行間を埋める」と称して下手に表情過多になったりするようなことは何処にもない。
友達にするにはあまり楽しくないタイプの人間だったようなことが多く書かれているけれど、私は彼の人柄がどうのということに興味はなく、ただその音楽に興味を持っているわけで、それがどうであろうと知ったことではない。

しかし、この切れ味鋭いフレーズ感はこの作品にピッタリだ。スコアを読んで、この演奏を聞くとなるほどと納得させられることばかりである。冒頭のフラメンコ・ギターを模したトゥッティの響きがどことなく透明感をたたえてあろう!!オケのメンバー美しいソロも魅力的だし、レオンタイン・プライスの歌も曲に合わせた見事なもので、「狐火の歌」での節回しなどゾクゾクさせられる。
何しろ名曲なので、ジュリーニの名演や、以前にとりあげたアンセルメの古くからのベストセラー(こちら)、更には、デ・ブルゴスの二つの名演やペドロ・デ・フレイタス・ブランコといったスペインのオケ、スペイン出身の指揮者たちによる名演もあるのは重々承知の上で、このハンガリーの指揮者、アメリカの歌手、オーケストラでこれほどのスペイン情緒が表現できていることに素直に耳を傾けてみるのも悪くない。

写真はモントルーの名高いシヨン城の中庭に面した城壁の回廊。詩人フランソワーズ・ボリヴァールが幽閉されていた城は詩人バイロンも訪れた観光地。でもここを撮った写真は滅多に見かけないので…。
ファリャの「恋は魔術師」をライナーの指揮で聞く_c0042908_10435171.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-08-03 10:43 | CD試聴記
<< ラフマニノフのピアノ・ソナタ第... ベートーヴェンのロマンスをちょ... >>