パガニーニのカプリースをリッチの演奏で聞く
作曲者 : PAGANINI, Niccolo 1782-1840 伊
曲名  : 24の奇想曲 Op.1 (1805)
演奏者 : ルッジェーロ・リッチ(vn)
CD番号 : DECCA/475 105-2



定番中の定番。ちょっと取り上げるのも恥ずかしいような気もするが、この壮絶な難曲を四回も録音したのは、彼だけである。無論、彼の他にもこの曲の名演を繰り広げている人もいる。大好きなレビン、あるいはMIDORIなどが思い浮かぶ。
この彼の2回目の録音はそれらの中でも飛び抜けた出来映えで、この難曲を爽快なまでに楽々と弾ききっている。これを当たり前と思って、ヴァイオリンの曲を書いたら、世の中のヴァイオリニストは皆困るだろう。昔、広島にいた頃、名前は忘れてしまったけれど、あるベテランの広島在住のヴァイオリニストがこの曲集の中から何曲かリサイタルでとりあげたことがあった。私はある人から招待状を押し付けられて、渋々お付き合いということで、行つて聞いた…。そして、こんな曲やらなければ良かったのにと気の毒になるほど惨憺たる状況を目の当たりにしたのだった。
まっ、この作品をやることが一人前のヴァイオリニストとしての証明みたいなところもあるのかも知れないから、無理してとりあげたのだろうが…。

パガニーニのこの曲は中身がないとか、色々言われるけれど、この悪魔的な哄笑は、一度魅了されたなら離れられなくなる。ベートーヴェンやモーツァルト、あるいはブラームスなどとは全く異なる世界に住む音楽なのである。
そして、聞かされる度に、この曲の凄まじいテクニックに圧倒されつつも、結局このリッチの演奏でお口直しをすることとなるのである。上にあげた名演はそうしたことがなかった数少ない名演である。
私の中でのこの曲の基準はこの演奏である。最近また再発されてわずか千円で手に入れることができるようになった。ぜひ一度聞いてみて欲しい。この曲を知らない人こそ、一度ぜひ!高度な技術はそれだけである爽快感を感じさせること、そしてベートーヴェンをはじめ、パガニーニの演奏を聞いた19世紀初頭の人々が一様に彼を讃美し、リストのようにいかに彼に近づくかを人生の目標にした者まで出たことを思えば、この作品1の果たした歴史的役割の大きさは計り知れないものと言えるだろう。

写真はこの曲が録音されたジュネーブ。ヴィクトリア・ホールではなく、宗教改革記念碑を出してちょっとバランスをとらないと…。
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by Schweizer_Musik | 2010-09-22 20:44 | CD試聴記
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