シェーンベルクのピアノ協奏曲を内田光子の名演で聞く
作曲者 : SCHÖNBERG, Arnold 1874-1951 オーストリア→米
曲名  : ピアノ協奏曲 Op.42 (1942)
演奏者 : 内田光子(pf), ピエール・ブーレーズ指揮 クリーヴランド管弦楽団
CD番号 : PHILIPS/UCCP-1016



この曲の面白さは格別である。12音で書かれた作品の中でも特に優れた作品の一つだと私は思う。昔はなかなか聞く機会のない作品の一つで、ブレンデルが録音したものがあったぐらいだった。ブレンデルがこれを録音していることは、初演者エドゥアルト・シュトイアーマンの弟子という特別の関係もあり、意義あることでもある。他にグレン・グールドが録音していたっけ…。
かつては選択肢のあまりなかったこの曲も、今では、内田光子やポリーニ、アックスといった名手の録音を手にすることができる。
渋い作品だったこの作品も次第にメジャーとなって来ているということなのだろうか。この面白さが受け入れられるようになったということなのだろうか。確かに面白い。いくつかの12音のルールを破って、かなり弾力的に運用することで、ドデカフォニーがふつうの音楽へと進化をしているのだ。ウェーベルンのような厳格な行き方とは大きく異なるものの、これはこれで一つのあり方である。
これを分析した時、私は「なーんだ、12音て何しても良いんだ」と納得もし、その可能性を確信したものである。大学二年の時だった。かなり夢中になって勉強したものだが、はたしてそうだったかどうかは、今は疑問だと思っている。12音で書くことは一年ほどで止めてしまったからだ。
でも、ある意味で私の12音音楽への理解を深めてくれた作品としてこの曲は今も私のメルクマールであり続けている。
内田光子の演奏は、他の名手たちのそれを圧倒している。ブーレーズの共演もすばらしいもので、今後これ以上の録音がでるかどうか疑わしい。この音楽をこれほど美しく、歌い上げることができるとは、想像すらしていなかった。ポリーニとアバドの名演もこの演奏の前には影を失う。
実は、世界文化賞の話に続いてポリーニ盤をとりあげようと聞き始めのだが、聞き比べるために内田光子盤をとりだして聞き始めたらもういけない。ポリーニ盤をやめてしまう事態へと変わってしまった次第である。
それほど圧倒的な名演。決定盤とはこの演奏のためにある言葉だと思う。

写真はディアヴォレッツァのベルグハウス。
シェーンベルクのピアノ協奏曲を内田光子の名演で聞く_c0042908_8423981.jpg

by Schweizer_Musik | 2010-10-13 08:42 | CD試聴記
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