リストのピアノ協奏曲第1番を小山実稚恵の演奏で聞く
作曲者 : LISZT, Franz 1811-1886 ハンガリー
曲名  : ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S.124 (1849/1853,56改訂)
演奏者 : 小山実稚恵(pf), 小泉和裕指揮 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
CD番号 : SONY-Classical/CSCR 8224



リストのピアノ協奏曲は、ヨアヒム・ラフやドップラーといった作曲家たちがオーケストレーションに手を貸したことが推察されると言われるが、何度も版を重ね最終的に1855年にようやく初演に至った後も手を加えるという、リストの作品の中でも難産の末に生まれた作品であるが故に、どこがどうということは研究者の手に委ねられるべきものだと思われる。
それにしても、リストの2曲ある協奏曲はなんという作品なのであろう。
ピアノが華麗だとか言う表面的なことより、この作品が長調と短調の境目を限りなくなくしてしまっている点がユニークで、トリスタンなどと同じくらい私には重要作に思われる。
冒頭の主題がどれだけユニークで、アイデアに満ちていることか!!変ホ長調で始まって2小節目でEb7のコード、続いてEのコード!!、そしてBb7のコードに落ち着いたと思ったらCのコード上で主題後半が始まるという破天荒極まりない出だしは、現代の私たちからしても驚異的なことである。
半音階的な転調、エンハーモニック転調を繰り返して行く中で、長調と短調の響きの中性化を引き起こすに至っていると思うのだ。
また、ソナタ形式と循環主題の統合を史上はじめて成功させた作品としても歴史的価値は計り知れないものがある。
しかし、こういう重要な作品でありながら、私が音楽を聞き始めた頃、今から40年ほど前の日本では、リストと言えば華美な装飾による軽薄な作品ばかりだという評価が一般的で、「ベートーヴェンのような音楽の深みに欠ける」という言い回しが一般的だった。
今にして思えば、いかにこれが見当違いな評価であったことか…。ハンスリックの言った「トライアングル協奏曲」というあだ名の方が、まだブラームス党とワーグナー党の戦いの延長でわかりやすいが、「音楽の深み」などという言葉を今口にするとかえって時代の変化を痛感させられて、ドキッとしてしまう。
しかし、この演奏、良いなぁ…。小泉和裕指揮のロイヤル・フィルも素晴らしい出来映えだ。

写真はチューリッヒからクールに向かうスイス国鉄の車窓の風景。ヴァーレンゼーに近いあたりの風景である。どうです?良いでしょ?
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by Schweizer_Musik | 2010-10-17 22:10 | CD試聴記
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