マーラーの 交響曲 第4番をラトルの指揮で聞く
作曲者 : MAHLER, Gustav 1860-1911 オーストリア
曲名  : 交響曲 第4番 ト長調「大いなる喜びへの賛歌」(1899-1900/1901-10改訂)
演奏者 : サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団, アマンダ・ルークロフト(sop)
CD番号 : EMI/5 00721 2



第1楽章がなんともヘンテコな演奏だ。遅くはじまり、主題が入る直前でrit.をかける。テンポはともかく、ここまでは楽譜の通りだ。続いて"Haupttempo"(もとのテンポに戻して)とあるところから急激にテンポをあげる。
かなりテンポは自由に変更している。これが気になって第1楽章は聞いていてちょっと辛かった。どうしてこんなことをしたのか、私には最後までわからなかった。
とても気持ちの悪い第2楽章も上手いし、安らぎに満ちた第3楽章もルークロフトの清楚な終楽章も私はとても良い演奏だと思うのだけれど、第1楽章だけがとてもヘンテコなのである。
実は第1楽章を聞いてもう聞くのを止めようと思ったのだが、思い直して続きを聞くととても良いので、そのまま聞くことにした。
第2楽章において「死神が歌う」とされるソロ・ヴァイオリンのスコルダトゥーラの効果もこの演奏で聞くととてもよくわかる。ヴァイオリンの弦を1全音高く調弦して、移調楽器として演奏させる。同じメロディーを弾いても異なる倍音がソロ・ヴァイオリンにだけ響く。その違和感がここでは重要なのである。
人と同じような姿をしている「死に神」がどこか違和感を醸し出す…。そんな表現が求められているのだ。マーラーは「友ハイン(死神)は演奏する。」と書いたそうだが、それはこういう理由からだと私は考えている。
それをこのラトルの演奏で聞くととてもよくわかる。
終楽章におけるルークロフトのソロはとても良い。彼女のヴィブラートがこの曲に対してはちょっと深すぎる気がしないでもないが、総合点では高い出来映えを示している。ただ私はこの楽章については古いベルナルト・ハイティンクの演奏でエリー・アメリンクが歌ったものが最も美しいと思っているので、この極めて優れた演奏でもまだちょっと…というところだった…。
確認のためにまたハイティンク盤のアメリンクが歌う第4楽章を聞き返してみた。そのあまりの美しさに聞き通して、終楽章だけアンコールを御願いしたところである。ハイティンクの上手さも尋常でない。彼がこの曲を得意にしているようで、それも当然と思われる。

写真はジュネーヴの旧市街、サン・ピエール大聖堂近くのカフェ。通りを占領してのカフェはジュネーヴだけではないとは言え、歩行者の側からするとちと歩きにくい…。でもこんなカフェでのんびりコーヒーても飲みながら、作曲をしたら良い仕事ができる気がする…(笑)。
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by Schweizer_Musik | 2010-10-26 10:13 | CD試聴記
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