作曲者 : BRITTEN, Benjamin 1913-1976 英
曲名 : 左手のピアノと管弦楽のための主題と変奏 "Diversions" Op.21 (1940/54) 演奏者 : レオン・フライシャー(pf), 小澤征爾指揮 ボストン交響楽団 CD番号 : SONY Classical/SRCR 9098 この曲はあのラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番などと同様、片手のピアニスト、ヴィトゲンシュタインが委嘱した作品で、1940年にヴィトゲンシュタインのピアノ、ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏で初演されているが、1954年に改訂されていて、現在聞けるのはこの改訂版のみである。 ジュリアス・カッチェンがブリテン自身の指揮するロンドン交響楽団と録音していて、これがこの曲のスタンダードとなる演奏と言えようが、他にドノホーがラトルの指揮で演奏したEMI盤もあり、このフライシャーと小澤征爾によるものはドノホー盤と同時期に録音されたもので、最も優れた一枚だと私は考えている。 大体、この魅力的な作品が、ラヴェルに比べてあまりに演奏される機会がないのはちょっと理不尽な気がしている。主題と10の変奏にフィナーレがつくそれぞれの変奏にはタイトルがつけられ、実に親しみやすい作品なのである。それぞれの変奏も才気に溢れ、イマジネーションを刺激する大変優れたものばかりで、オーケストレーションも水際だった素晴らしさである。 右手の故障により、左手のみのピアニストとして活躍していたフライシャーの素晴らしい演奏と、小澤征爾の完璧な指揮で浮かび上がる個性的な各変奏の面白さは、お聞きでない方はぜひ一度、聞いてみられることをお薦めしたい。 古いカッチェンの演奏が一つの規範であるとするならば、この演奏はのびのびとその規範から羽ばたく創造力の賜と言ってよい。小澤征爾の指揮の良さは実に目覚ましいものがあり、それぞれの変奏の性格を的確に表現しつつ、よく弾むリズムというかテンポ感で生き生きと音楽を進めていく。フライシャーもずいぶんやりやすかったことだろう。 小澤征爾の合わせ物の素晴らしさは定評のあるところだが、この録音などはまさしく典型と言ってよいだろう。ロマンス、行進曲、アラベスク、夜想曲、バディネリ、ブルレスケ、トッカータ…。タイトルは音楽的なものばかりであるが、それだけでも楽しくなって来はしないだろうか? ブリテンの数少ないピアノとオーケストラの作品であるが、彼の飛び抜けたセンスの良さを体験するには打って付けの作品であり、演奏である。 写真はベルンの旧市街。
by Schweizer_Musik
| 2010-11-16 00:28
| CD試聴記
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