神へのささげもの "Sacrificium" カストラートのためのアリア集を聞く
作曲者 : PORPORA, Nicola 1686-1768 伊
曲名  : 歌劇「シファーチェ」(1725年ミラノ初演/メタスタージオ詞) 〜 アリア他
演奏者 : チェチーリア・バルトリ(m-sop), ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 イル・ジャルディーノ・アルモニコ
CD番号 : DECCA/UCCD-1251



英語で"castrate"とは「去勢する」という意味らしいが、カストラートとはこのタイトルの映画もあったのでよく知られていることと思うが、去勢された男声歌手の意味で、1600年代から300年もの間、バチカンの合唱はこのカストラートによってソプラノとアルトが歌われてきている。
歌手たちは孤児院などから選ばれ、強制的に「去勢」された男たちであった。このことの人道的な問題についてここで述べることではないのでやめておくが、無論のことながら今日ではカストラートは存在しない(はず…)である。
18世紀はこのカストラートの歌手が一大ブームとなった時代でもあった。しかしながらカストラートがいなくなるとともにその音楽は耳にすることもなくなったことも事実で、バロックの後期、あるいは前古典期の声楽作品の重要な部分がすっぽりと抜け落ちていることを、こうしたCDに接することで再認識させられるのである。
ポルポラは名前は音楽史で聞いたことはあるものの(ハイドンの先生の一人でもあった…)、実際にまとめて耳にすることは滅多にない。
カルダーラも私はエドウィン・レーラーが録音したカンタータなどを数曲知っている程度で、全く無知である。
無論、このCDでその全貌を理解するというところまではいかないものの、優れた演奏(バルトリの歌の素晴らしさ!!)によって私たちが知ることのできることの大きさは計り知れない。
普段、メジャー・レーベルがベートーヴェンやマーラーなどの録音ばかりの大衆に阿るばかりで、企画力の低下を嘆くことが多い私であるが、これには参った。
かつて、ハイドンの歌曲全集をエリー・アメリンクとイェルク・デムズの組み合わせで初めて耳にした時のような清新さと世界の広がりを感じさせてくれる一枚であった。
チェチーリア・バルトリという人を得ての企画であったと思う。ジョヴァンニ・アントニーニ指揮 イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏も実に美しいもので満足であるし、日本盤の解説も力が入っていて、私のつたない知識に新しい世界を教えてくれた。これは日本盤で手に入れておくべきだ。
こうしたものは一度廃盤になると、もう手に入れるのは大変困難になるので、ぜひ早いうちに購入をお勧めしたい。
レコード・アカデミー賞を受賞したとのことで、このCDの存在を知ってすぐに手に入れたもの。買って良かった…。

写真はゾフィンゲンの町並み。
神へのささげもの \"Sacrificium\" カストラートのためのアリア集を聞く_c0042908_7293314.jpg

by Schweizer_Musik | 2011-01-12 07:29 | CD試聴記
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