作曲者 : MAHLER, Gustav 1860-1911 オーストリア
曲名 : 交響曲 第5番 嬰ハ短調 (1901-02) 演奏者 : フランク・シップウェイ指揮 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団 CD番号 : Documents/233253 yurikamomeさんがマーラーを取り上げておられ、この曲をいくつか聞いておられるのを読んで、手元にあったロイヤル・フィルのバジェット・プライスのボックスにもこれがあったので聞いてみた。 大体このロイヤル・フィルのボックスは30枚組の第1集、第2集とあり、これは第2集の方に入っている。とても全部聞けない量で、まだ60枚の内の10枚ほど聞いたところだ。で、このシップウェイなる指揮者のマーラーを聞いてみた。 いや〜ビックリした。アベレージが高いとは思っていたが、クラウス・テンシュテットやヘルベルト・フォン・カラヤン、ジョン・バルビローリと聞き込んで来たつもりなのだが、それらに匹敵する名演がこんなところに隠れていたとは…。 単体で売られていたら、もうたくさん良い演奏のCDを持っているので、絶対手を出さなかっただろう。今更マーラーの交響曲なんて欲しいものなんて限られている。知らない指揮者で聞いてみるなんてことしなくても、もう充分なはずだった。しかし、シップウェイのこの演奏は、その上で聞いてみる価値はあった。 オケも大変良い。冒頭の輝きのあるトランペットのソロは、鳴りにくい音なのになんて良い音なのだろう。ただの爆演などではない。アンサンブルはよく整えられていて、バランスも良い。オケが精一杯の演奏を残そうという気概に溢れている。シップウェイも無理なテンポや表現で人を惹きつけようなどという山っ気は全くない。スコアをこんなに大切にしてくれたら、天国のマーラーも喜んでいることだろう。 拡大されたロンドで書かれた第1楽章に続いて、激烈で大きな表現の振幅を持つ独特のソナタ形式の第2楽章が続く。こんなに変わったソナタ形式の曲なんてチャイコフスキーの「悲愴」の第1楽章くらいではないだろうか? これをシップウェイとロイヤル・フィルは大きな表現と丁寧なアンサンブルで見事に乗り切る。力強くそして繊細。録音も派手すぎるところもあるが、良い。これを聞きながら、久しぶりに胸が熱くなってきた。マーラーの第5番をこんなに夢中になって聞いたのは久しぶりのような気がする。 続く長い長いスケルツォが短く感じるなどという嘘は言う気はないけれど、そう感じるほどであったことも違いない。シップウェイって何者?と思い始めてしまった。私ごときが知らないだけなのかも知れないけれど、第2楽章の終わり近く、激烈な闘いの末に勝利を得るがごとき場面でつい涙が…。(近頃涙腺がやたら弛んで困っているのだが…笑) で、牧歌的レントラーのスケルツォがリズミックによく弾んで、この曲の対位法的構造をシップウェイとロイヤル・フィルが見事に再現して聞かせてくれるのだから、不満を言うヒマなどなく、一気に曲はアダージェットへと続いていくのである。 有名すぎるアダージェット以降も、ここまで書いてきたら、良いものだということは明白だ。そしてそれは裏切られることはない。この楽章、かつてカラヤンの録音を聞いて以来の感動であった。よく歌っていて、長い長いフレーズを丁寧に、のして伸びやかに歌い上げていて見事!! 終楽章ははじめて聞いて以来、未だにこのノーテンキな世界に違和感を感じている私であるが、冒頭のパストラーレな感じから次第に広がりを得ていくところは、とても納得感があった。 写真はザンクトガレンの町を高台から見晴らしたところ。ケーブルカーで行ったこの高台の散歩道はスイスの中でも1・2を争う最高の遊歩道だと私は思う。
by Schweizer_Musik
| 2011-02-14 09:32
| CD試聴記
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