バッハのパッサカリアとフーガをヘーリックの演奏するゾフィンゲンのメッツラー・オルガンで聞く
作曲者 : BACH, Johann Sebastian 1685-1750 独
曲名  : パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582 (1708以前)
演奏者 : クリストファー・ヘーリック(org)
CD番号 : hyperion/CDA-66434



ちょっと前に、ヘーリックがこのオルガンを使用してトリオ・ソナタを録音したCDをとりあげたけれど、今回は人気曲のトッカータとフーガニ短調(ただし最近の研究でバッハの作である根拠が何もないことが分かったけれど…)をはじめパッサカリアとフーガ、ドリア調のフーガなどが含まれているもので、あのゾフィンゲンの静かな村でこの録音が行われたと思いながら、朝のひとときをバッハとともに過ごしている。
録音が良いというだけでなく、エッジのたった音で聞かれるそれは、バッハのポリフォニーの面白さをよく伝え、音楽の広大な世界を表現している。ヘーリックの衒いのない演奏は、色々とゴチャゴチャと装飾を付け加えた昨今の歴史考証を経たと主張する演奏と違い、私にはずっと真性なバッハ像のように聞こえる。
まっ、時代考証型の演奏、いわゆるピリオド楽器と奏法があまり好きでない、古い頭の持ち主の言うこと故、あまり大きくとりあげないでいただければと存じるが、私は音楽は素直に、音楽的な耳と技で過不足の亡い演奏を目指すべきという考えの持ち主であり、楽譜に忠実であるべきと考えているので、その点からもヘーリックのバッハは実に好ましい。
それにしても、オルガン製作者にポイントを搾ったこのヘーリックのバッハ全集の録音は極めてユニークである。オルガン制作者と言えば、古いジルバーマンなどが真っ先に頭に浮かぶけれど、ユルゲン・アーレントやメッツラーという現代の名工たちも忘れてはならない。
そしてそれに焦点をしぼるというハイペリオン・レーベル独特の企画は誠に見事。そしてその企画にピタリとはまったヘーリックの演奏は、オルガンの良さを伝えて居て更に見事。
こんな良い企画、あまり日本で紹介されないのはやはりオルガン文化が日本に根付いていないからなのだろうか?
そんなことをちょっと思ったりしていた。

写真はこのゾフィンゲンの市教会のメッツラー・オルガンである。昨年の夏に撮ってきたもの。
バッハのパッサカリアとフーガをヘーリックの演奏するゾフィンゲンのメッツラー・オルガンで聞く_c0042908_1163492.jpg

by Schweizer_Musik | 2011-04-08 11:06 | CD試聴記
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