マルティヌーの「調理場のレビュー」を聞く
作曲者 : MARTINŮ, Bohuslav Jan 1890-1959 チェコ→米
曲名  : バレエ音楽「調理場のレビュー "La Revue de Cuisine"」H.161 (J.クレシロヴァ台本) (1927)
演奏者 : ダーティントン・アンサンブル【ダヴィッド・キャンベル(cl),グラハム・シーン(fg),バリー・コルラーボーン(trp),オリバー・バターワース(vn),ミシェル・エヴァンス(vc),ジョン・ブライデン(pf)】
CD番号 : hyperion/CDA66084



昨日の総会で、この曲を12月の定期でやることが決まった。昨日、楽譜を配れたらと思っていたのだけれど、まだ届かず、わたすことができなかったものである。今日届いた…。ホント、うまくいかないものだ…ヤレヤレ。
マルティヌーはチェコ語で"ti"は「チ」と日本語表記されるそうで、したがってマルチヌーと表記すべきということだが、習慣で昔のままマルティヌーとここでは表記しておく。
「調理場のレビュー」は、クラリネット、ファゴット、トランペット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノという風変わりな編成による室内楽によるバレエという面白さがあり、チャールストンやタンゴという曲名が並ぶので、アメリカ時代の曲かと思うかも知れないが、実は1927年の作品で、パリ時代の作品である。初演は同年のプラハで行われているが、原曲は10曲からなる。私がノイエ・ムジカ東京でやりたいのは1930年パリで初演された組曲版で、全部で4曲からなる。この軽快さは、ストラヴィンスキーの「兵士の物語」などの系列に属するものと考えて良いだろう。
風変わりな六重奏は、実に効果的で、ジャズの影響をうまく取り込みながら、当時の流行の最先端のモードを聞かせる。
ダーティントン・アンサンブルの演奏は、私が楽譜から読み取っているものからするととても大人しい演奏に聞こえる。イギリスの団体だからというのは勝手な思い込みで、やはりアンサンブル自体の楽譜への迫り方が不徹底なように思われる。
私はこのCDしか持っていないのだけれど、1990年のロッケンハウス音楽祭のライブでイザベル・ファン・クーレン(vn), クリストフ・リヒター(vc), ミシェル・ズーコフスキー(cl), シュテファン・シュヴァイゲルト(fg), クレメンス・ケルクホフ(trp), デジェ・ラーンキ(pf)という豪華なメンバーがやった第3曲の「チャールストン」の演奏なんて聞き比べたら、別の曲に聞こえてしまうほど。
やはり、もっと音楽の本質(それはもっと楽しく、リズミックなものであるはずだ)に積極的に迫っていかないと、こうした曲はつまらなくなってしまう。

実は、この曲のスタディ・スコアを手に入れたのはもう30年ほど前のことで、ヤマハの楽譜売り場でワゴンにのってバーゲンで売られていたものだ。
全く知らない曲で、マルティヌーという作曲家についても交響曲を一曲か二曲知っていただけだったので、このスコアは読んでいてとても強烈な印象を受けた。ボヘミアの作曲家がこんなに洒落た作品を書いていたなんて…。以来、どんな曲かとスコアを読み、私の下手なピアノで時々音にしてみては、この作品の魅力に惹かれていったのである。
今回、パート譜付きのものを手に入れて、演奏会でやるということにしたのは、この曲が、当時のパリにあったジャズの要素を取り入れた様式の流行とガーシュウィンをプログラムの中心に据えるという試み故である。

ダーティントン・アンサンブルのような大人しい演奏ではなく、弾けた楽しい演奏をみなさんにお聴かせしたいと思っている。
とは言え、この演奏で、私ははじめて音を聞いたのであった。何度も聞いて、スコアを読んで、最初は軽い失望を覚えつつも、最近は、やはりこの曲を聴けるというだけで感謝している。
他にもいくつか録音が出ていることをこの度のことで知った。今、カメラータ・ジュネーヴのCDを取り寄せているところで、またいつかレポートしたいと思う。
良い曲ですよ!!

写真はミュスタイアの聖ヨハネ・ベネディクト修道院のカール大帝時代の壁画である。これがその上に描かれた絵の下から出て来た時は皆驚いたことであっただろう…。
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by schweizer_musik | 2011-07-21 21:43 | CD試聴記
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