ワーグナーの歌劇「恋愛禁制」の序曲を聞く
作曲者 : WAGNER, Richard 1813-1883 独
曲名  : 歌劇「恋愛禁制」(1835-36) 〜 序曲
演奏者 : フランチェスコ・ダヴァロス指揮 フィルハーモニア管弦楽団
CD番号 : Brilliant/99493



冒頭からカスタネットが鳴り響き、スッペの出来損ないのような軽快なテーマが鳴り響いて、ニヤリ。ワーグナーに似つかわしくない主題設定の冒頭は、なかなかの聞き物だ。その後にワーグナーらしい「壮大な」展開が始まるのだけれど、そこもまだ彼自身がまだ何をどうしたいのか、明確に出来ていないようで、これまたニヤリ。
あのワーグナーにもこんな時代があったのだとちょっとうれしくもあり、この軽快なテーマはきっと流行のロッシーニあたりの影響だろうと思ったりもし、パリ進出の野望をもっていた彼らしい企画だと思ったりして、いや〜なかなかに楽しい。
歌劇「妖精」のあとに書いたこの曲は、まだ「タンホイザー」などの個性は完全に確立されていない。モーツァルトやリヒャルト・シュトラウス、メンデルスゾーンといった人たちの早熟ぶりに対して、ワーグナーは遅咲きだったのだ。二十歳を越えたばかりの青年が、大いなる野望を胸に書いた未熟な作品を、こうして聞いていると、自分がどうとかいうのではないが、何となく共感してしまう。
名曲とは思わないが、私には楽しい作品だ。この後の「リエンツィ」に至って、彼は自分が何者か、自己の音楽がどういうものであるのかが確立される。その前の試行錯誤は誰にでもあることで、恥ずかしいことではない。ワーグナーだってそうだったんだ…。ここで、私はもう一度ニヤリ…。ごめんなさいね。ワーグナーさん。

写真は、ブルックナーのようなしつこさをもってベルニナ線の旅から…。アルプ・グリュム近くの風景から…。
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by schweizer_musik | 2011-08-14 21:19 | CD試聴記
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