作曲者 : KHACHATURIAN, Aram 1903-1978 露
曲名 : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 (1939-40) 演奏者 : レオニード・コーガン(vn), ピエール・モントゥー指揮 ボストン交響楽団 CD番号 : RCA/BVCC-34426 その昔、大阪フィルハーモニー交響楽団の定期に徳永二男氏が来てこの曲を演奏したのが最初のこの作品との出会いだった。エキゾチシズム溢れる音楽に、すっかりはまってしまい、ヘンリク・シェリングのレコードを早速手に入れて聞き込み、やがてオイストラフが作曲者の指揮で録音したものなど盤歴を重ねて今日に至っている。 最近、滅多に聞かなくなっていたけれど、今朝、久しぶりにこの演奏を聞いて、またこの曲の魅力にはまりそうになっている。 レオニード・コーガンも作曲者の指揮でこの曲を録音していて、作られて間もない作品にこれだけ世界的なヴァイオリニスト、指揮者が取り上げているというのも、なんと幸せな作品だろうと思わずにはいられない。 一度とりあげられただけで、二度と演奏されない曲の方が圧倒的に多いのに…。世の人はそれはそれだけの価値しかその作品に無かったのだと言うかも知れない。しかし、たった一度の演奏で聞いた人もわずかなのに、それで判断されてしまうというのも何とも厳しい…。それに対して、この曲の誕生からの順風満帆の履歴は、羨むべきものだ。もちろんこの曲の魅力によるものだし、初演から大変な成功を収めたこともあってのことであることはよく分かっている。 多分、この曲の異国情緒、それはハチャトゥリアンがこだわり抜いたアルメニアの音楽(がどんなものか、実際には私は知らないが…笑…)に依拠しているのだろう。この曲のモードの独特な使い方、そして効果的なオーケストレーションから醸し出されるエキゾチシズムは、半端なものではない。 コーガンのヴァイオリンは媚びない、実に健康的な演奏なのだが、それでも噎せ返るような異国情緒には全く不足はない。これをイヴリー・ギトリスなどが演奏したら凄いことになっていたかも…。コーガンに限って言えば、モノラルながら作曲者との録音の方が優れている。但し、作曲者の指揮するモスクワ放送交響楽団の演奏がやや荒っぽいので、私は全体としてはこちらの方が良いように思っている。実際、ハチャトゥリアンは結構指揮して自作を録音しているが、その実力は今ひとつと思っている。ペンデレツキの指揮もそうだけれど、作曲家は自作の指揮などせぬ方が良い。少なくとも指揮が上手くないのなら…。 この、ピエール・モントゥーの指揮は全く素晴らしいもので、この彼にとっては現代音楽であるはずの新しいレパートリー(モントゥーが65才の時にこの曲は書かれているのだから、それから彼はレパートリーにしたということになる。なんという凄い人なのだ!!)を無難にまとめ上げているだけでなく、エキゾチシズムを煽ったりせず、節度のある演奏でコーガンの演奏をもり立てている。コーガンはちょっと借りてきた猫のような大人しさで、今ひとつ彼の演奏としては物足りないけれど、作曲者の乱暴な指揮を聞くよりはマシ…というわけで、こちらを取り上げた次第である。 ただ、この曲なら、ルッジェーロ・リッチがアナトリー・フィストラーリ指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(DECCA/448 252-2)の方が総合点では上だと思っている。オイストラフと作曲者の指揮による録音がそれに続くと思う。オイストラフとやる頃には少し指揮の上手くなっていたようで、コーガンとの時のような乱暴なアンサンブルではなくなっているが、オケが腕利き揃いのフィルハーモニア管弦楽団だったということもあるのかも知れない。 ともかく、天下の人気作である。まだお聞きでない方はぜひご賞味あれ!! 写真は、暮れなずむ芸術の町ヴィンタートゥーアの街角。
by Schweizer_Musik
| 2011-08-17 10:24
| CD試聴記
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