ベン=ハイムの管弦楽のための組曲「イスラエルより」を聞く
作曲者 : BEN-HAIM, Paul 1897-1984 独
曲名  : 管弦楽のための組曲「イスラエルより "From Israel"」(1951)
演奏者 : レオポルド・ストコフスキー指揮 シンフォニー・オブ・ジ・エア
CD番号 : CALA/CACD0551



ドイツのミュンヘンに生まれ、ブルーノ・ワルターの助手を務めていたパウル・フランケンブルガーがナチスの台頭とともにドイツを離れ(ざるを得なかった…)、パレスチナに移住し、1948年のイスラエル建国とともにイスラエル国民となり、彼の地で多くの弟子を育てた作曲家である。
パウル・ベン=ハイムというヘブライ風の名前は、1933年に移住した時に改名したものだそうである。
この「イスラエルより」は後期ロマン主義の作風と中東風の音楽のアマルガムである。ベン=ハイムの作品が全てそうなのかと知らないが(この他にピアノ・トリオのためのヘブライの旋律による変奏曲しか知らないので…)そうした穏健な作風で、現代の前衛とは無縁のわかりやすいアカデミズムに腰を落ち着けた作曲家だったと思われる。
堅実故に、この曲もとてもわかりやすいイスラエルの音楽による「絵はがき」となっている。一つ一つが心に染みいるとかいうものではないし、考えさせられたり、魂を揺さぶられるようなものとは違う。きれいな絵はがきである。だが、それでも私は一定の価値を認める者である。

全5曲からなる組曲は、第1曲のプロローグはあってもなくても良いようなものだが、第2曲の雅歌は訥々とした「歌」に対して、持続するオブリガートが絡んでいってとても美しい情感が描かれている。第3曲「イエメンのメロディー」はいかにも中東風のメロディーが舞曲風のリズムに乗って流れていく。
第4曲は「シエスタ」とタイトルが付いているが、ウォルトンの「シエスタ」のようなエスプリはここに期待しても仕方がないが、フルートのメロディーを伴奏する弦のハーモニーがちょっと変わっていて印象的である。まっ、無くてもかまわないかなぁ…。それなりにきれいだけれど。終曲はCelebrationとつけられている。どんな祝典なのかは知らないけれど、エキゾチックなメロディーにエキゾチックな和音、漸進性のあるリズム、次第に高揚していく音楽はとても良いし良く書けている。
この成功はストコフスキーの手腕によるところ大であろう。かつてのアルトゥーロ・トスカニーニの手兵だったシンフォニー・オブ・ジ・エアの演奏も含め、この曲の出生は大変幸福だったと思う。
ただ、この作品が今後とも長く聞き続けられるものか、ちょっと微妙かなぁ…。悪い曲ではないけれど。

写真はブラームスが滞在し、交響曲第1番を書いたチューリッヒ湖畔のリュシリコンの村の波止場から撮った湖の写真。
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by Schweizer_Musik | 2011-08-19 23:12 | CD試聴記
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