作曲者 : STRAUSS, Richard 1864-1949 独
曲名 : 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」Op.30 (1895-96) 演奏者 : ネーメ・ヤルヴィ指揮 スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 CD番号 : CHANDOS/CHAN 8538 もうずいぶん前の録音である。1987年というから、まだまだCD時代に入ったばかりの頃のことだった。その頃、ヤルヴィの演奏は覇気があった。今はちょっとその勢いが無くなってしまったような気がしているけれど、当時の録音からはまだこれから西側で名前を売っていかなければ、みたいなどん欲さが音楽にもあったように思う。 それが、シベリウスの交響曲全集などに結実したのではないだろうか。またシャンドスへのシュトラウスの一連の録音となったのだと思う。 彼は、同時代の指揮者の中でも格別に録音数が多い指揮者である。それだけ売れるから録音されるということなのだが、ベートーヴェンやマーラー、モーツァルト、ブラームスといったあたりにはほとんど手をつけず、その周辺を、そして埋もれていた作品を多く録音し、カタログの穴を埋めていったのだった。 確かに当時、私は彼のCDを買う時、この曲を聴いたことがあるか、あるいは持っているかという基準で選んでいたものだ。 こうした指揮者として彼の立ち位置の決め方、自己プロデュースの上手さは、同時代の指揮者の中でも際立っていた。おそらくはそれがあの膨大な録音量へとなっていたのだろう。 だからかどうかわからないが、すでに持っている曲などは、ついつい買いそびれてそのままになっているものが多い。シュトラウスの管弦楽作品は、ルドルフ・ケンペの全集を持っていて、それだけで充分だと思っていたから、この演奏もつい最近、classic-japanてダウンロードして聞くことができた。 今、こうして聞くと、これらのレパートリーを避けて買っていたのは間違いだったと思う。ズービン・メータとロス・フィルの演奏の派手な印象はこの演奏からは受けない。ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管のようなしっとりとした肌触りとも違う。カラヤンの録音(たくさんあるので、どれでもよろしい)のような艶やかな響きもここにはない。 ヤルヴィの演奏は、全体に地味で少しザッハリッヒな感触でありながらオケを充分にそして生き生きと鳴らしている。そしてそれはこの曲の表現の可能性を示したものだと思う。 彼の演奏は、所謂「タメ」が少し浅いのが特徴で、その代わりに漸進性が得られる。テンポは意外によく動かすのだが、目立つ感じはせず、過度にロマンチックに溺れることは決して無く、バランスが良いのが特徴だ。その割には音量が小さめに収録されていることが多いのだが、オーケストラが立体的に響くので、スコアをチェックしながら聞くのに都合が良いので重宝している。 この曲は人気曲でもあり、様々な名演があるが、CD初期のこの演奏もまたその1つとして忘れることのできない一枚だと思う。 写真はベリンツォーナの町の風景からの一枚。
by Schweizer_Musik
| 2011-08-23 15:35
| CD試聴記
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