超私的「ランキング」ピアニスト編 Vol.3
第28位 ホルヘ・ボレット

CD時代に入り、このベテランのピアニストがブレイクした。まずリストのピアノ曲で彼は音楽界に復活した。その昔、エンサーヨなどにリストを録音していて、それは輝かしいヴィルトゥーソぶりで私を魅了したものだったが、その優れたデッカのスタッフによる優れた録音で、やはり私には決定盤と思われた。
特に、巡礼の年第1年、第2年なんてこんなに美しい演奏で聞けるなんて思いもよらなかった。

1914年にキューバのハバナで生まれた彼は、その多くの歳月を音楽家としては不遇の内に過ごし、その最後の10年あまりに彼の栄光の時代がやってきたのだった。とは言え、日本とも縁があり、戦後GHQの音楽担当ディレクターとして来日し、サリバンの「ミカド」の日本初演を指揮したりもしているようだ。
しかし、この時代のピアニストとしては当然だったのかも知れないが、特にコンクール歴もない彼が、ピアニストとして認められるには紆余曲折があったようで、1970年代に入って、カーネギー・ホール・コンサート(CDが出ている)で大成功を収めてからのことだった。
その後、1978年からデッカと契約し、一連の録音が生まれることとなったのである。
が、その昔、例えば、リストのハンガリー幻想曲 (ハンガリー狂詩曲 第14番) S.123をロバート・アーヴィング指揮シンフォニー・オブ・ジ・エアと録音したもの(EVEREST/EVC 9015)などは、あまり話題とならないものの、大変優れた演奏で、彼がどうして不遇であったのか私には全くわからない。
ゴドフスキー直伝の作品集(ショパンのエチュードの恐ろしく難しい編曲版など…DECCA/POCL-90084)も、この最後の10年あまりの間に残されたことは、幸いであった。
しかし、リストの弟子であるモーリツ・ローゼンタールにも師事していた彼の本領はやはりリスト作品とショパンの演奏にあったと言えよう。
先にあげた、デッカ録音ではなく、リストの超絶技巧練習曲の真に輝かしい録音は、スペインのエンサーヨにおそらくは1960年代後半ら録音したものである(ensayo/3401)。これを聞き、ラザール・ベルマンのメロディア盤があれば、私は他は別に失っても困ることはないだろう。
同じレーベルにリストのパラフレーズ集も録音していて、これまた素晴らしい出来映えで、リスト好きならばどちらかはぜひ一度聞いておきたいものである。「リゴレット・パラフレーズ」の完璧な演奏とはこの録音にあると思う。
デッカ録音では、先にあげた巡礼の年 第2年「イタリア」を推薦しておこう。協奏曲録音ではイヴァン・フィッシャー指揮 ロンドン交響楽団と共演したラフマニノフのピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30(DECCA/414 671-2)かゲオルク・ショルティと共演したシューベルトの「さすらす人幻想曲」をリストが協奏曲仕立てに編曲した版の録音(LONDON/POCL-1073)をあげておこう。

写真はブリエンツロートホルンの山の上のホテルで見たアイガー、メンヒ、ユングフラウ。手前にファウルホルンの山越に見える白銀の山々は、更にラウターブルンネン・ブライトホルン、グスパルテン・ホルンへと続く。当に絶景!!
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by Schweizer_Musik | 2011-10-11 20:54 | 超私的「ランキング」
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