超私的「ランキング」ピアニスト編 Vol.7
第24位 レイフ・オヴェ・アンスネス

アンスネスは、まだ10枚程度のCDを聞いただけなので、どれが良いとか言う資格は私にはない。しかし、とても気に入っているピアニストの一人であり、1990年代の終わり頃からちょくちょくと聞いているピアニストの一人だ。
1970年生まれというから、ずいぶん若い頃から第一線にいることに、この頃やっと気付いたけれど、当初、北欧のレーベルなどにいくつかの録音があり、私などはそこにあったプロコフィエフのピアノ協奏曲 第3番(SIMAX/PSC1060)でこのピアニストを知った。
パーヴォ・ベルグルンド指揮 オスロ・フィルハーモニー管弦楽団と共演したラフマニノフのピアノ協奏曲 第3番の録音でもこのピアニストの技巧の冴えを聞くことができたけれど、そのCDの穴埋めのように入っていた絵画的練習曲からの数曲がとても気に入った。(現在はVirgin/TOCE-14302で聞くことができる)
しかし、達者なだけのピアニストでないと、印象を大きく変えたのは、イアン・ボストリッジと共演してEMIに録音したシューベルトの「冬の旅」の録音だった。極めて流れの良い演奏で、この曲をテノールで歌ったものとしては最高の録音の1つではないだろうか?そしてその音楽を支えるアンスネスのピアノのサラリとした中に深さを感じさせる演奏は、軽量級のボストリッジの歌を深みのあるものへと誘うのである。
いや、あの「冬の旅」には参った。あの曲はもともとテノールのために書かれたもので、調性関係もテノールならばすっきりするのである。いやそれ以上に、「冬の旅」は青春の歌であって、老人の絶望の音楽ではないのである。
こんな当たり前のことを真っ正面から切り込まれた気がして、これを聞いてからフィッシャー=ディースカウなどの名演が聞けなくなってしまった…。
以来、このちょっとあったり味の、聞き込む度に深みの増していく演奏に大枚を投じてしまった次第である。

コンクール歴は華やかなものとは到底言えない(1987年のフランクフルト・ヒンデミット・コンクールのみ)。北欧のベンゲンの音楽院で学んだというこのピアニストは、演奏そのもので1990年代のヨーロッパを席巻し、地位を確立していったのである。
レコード・アカデミー賞をとったパッパーノの指揮で録音されたラフマニノフの協奏曲全集も良いけれど、私はトゥルルス・モルクと共演したシューマンのアダージョとアレグロ 変イ長調 Op.70がとても気に入っている。この美しすぎる作品は、シューマンの作品の中で知る人ぞ知る名作なのだ!大きな身振りで媚びをうるような事は絶対しない、モルクの誠実なチェロとアンスネスのよく流れるピアノによって、この作品の最高の演奏となっている。
彼の演奏の特徴は、素晴らしい技巧に裏付けられて、良く流れる音楽にあるように思う。シューベルトの「冬の旅」ではそれが大きくプラスに働いて、見事な演奏となったが、一方で同じシューベルトのソナタの演奏などでは、若干食い足りないというか、あっさりしすぎているようにも思う。19番など、もっとどっしりと弾いてほしいと思うのだが、彼はあっさりと歌い上げる。それでも聞き込む内に、これも「あり」かなと思わせる何かが彼の演奏にはある。
まだ、ベートーヴェンを聞いたことがないし、できればバッハなども聴いてみたいと思う。まだ評価が自分の中で定まっているとは言えないところもあるのだが、アンスネスはやはり気になる存在である。

写真はゴルナーグラートのクルム・ホテル越に見た朝焼けのマッターホルン。
by Schweizer_Musik | 2011-10-13 09:12 | 超私的「ランキング」
<< クラリネット・ポルカの本番の映... 超私的「ランキング」ピアニスト... >>