作曲者 : JOLIVET, André 1905-1974 仏
曲名 : ピアノ協奏曲「赤道コンチェルト」(1949-50) 演奏者 : フィリップ・アントルモン(pf), アンドレ・ジョリヴェ指揮 パリ音楽院管弦楽団 CD番号 : SONY-Classical/SICC-1522 この録音が最近復活したので、ついつい買いそびれたままになっていたので購入した。 無論LPでは持っていたし、学生時代はよく聞いた一枚だった。それだけに、何十年ぶりかで聞くと懐かしく、力強いリズムがドンドコと鳴り出したらもう止められなくなった。 何種類か録音は持っているけれど、やはりこの演奏が1番面白いし、アントルモンのピアノもこの頃が最も輝いていたように思う。 ジョリヴェの代表作と言っても過言ではないだろう。無論他にも重要な作品がジョリヴェにはある。が、この曲の与えたインパクトは大きい。確か初演の際にはブラヴォーとブーイングが相半ばしたと言う。それは曲名の「赤道」が、フランスの植民地問題と合わせて論じられた結果で、初演後、作曲者はこの「赤道」の名前をとってしまい、ただのピアノ協奏曲としてしまった。 そうした政治向きの話は、ここでは無縁のことなので、誰か他の「有識者」の方にお願いするとして、私としては、音楽について話を進めたい。 さて、この作品が高く評価され、多くのピアニストが魅力を感じているのは、ピアノ協奏曲でここまで徹底したバーバリズムを表現したという点にあるのではないだろうか。プロコフィエフなどにもそうしたところが無きにしも非ずだが、よりしなやかな抒情と力感がこの曲の身上である。 プロコフィエフの第2番などもそうしたところがあるとは言え、ロマン派の尻尾を引きずった近代化であり、バーバリズムだと思う。そのあたりの不徹底さが、あの曲の特徴である。(弱点だとは書かない。あくまで曲の性格の問題であるから) ただ、ジョリヴェはそうしたプロコフィエフなどの実験を知っているからこそ、その轍を踏むことなく、新たな地平を切り開くことが出来たのだと思う。シマノフスキの交響的協奏曲あたりとの共通点を指摘したりする人もいるが、私は師であるヴァレーズから受け継いだものと、彼自身のテンペラメントに由来するものと思っている。 この作品は戦前、彼が呪術的な世界などに傾倒した時代の様式と、より古典的な様式とが統合されて完成したジョリヴェ独特のスタイルによる傑作だと言えよう。 ジョリヴェは自作の指揮をよく行っていて、それもかなり上手だったようだ。私とはずいぶん違う…(笑)。その指揮で、アントルモンが思い存分弾いている。そう易しい曲ではない。スコアを見ていないので分からないが、聞いただけでも難曲だと分かるが、切れ味抜群の演奏で、惹き付けて止まない。 個人的には、呪術的情緒でエキゾチックに聞かせる第2楽章が好きなのだけれど、他の楽章も含めて、近代音楽のお好きな方には大推薦の録音である。 こうした曲はすぐに手に入れにくくなるので、お早めにどうぞ! 写真は引き続きルガーノの聖アボンディオ教会。
by Schweizer_Musik
| 2011-11-27 11:44
| CD試聴記
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