柳澤涼子さんのコンサートに出かけた
ソプラノ歌手の柳澤涼子さんのコンサートに出かけた。日暮里のサニーホールで、小さなホールであったが、八割程度の入りでなかなか盛況という印象だった。
前半の新作の日本歌曲は、伊藤康英氏によるもので、真摯な作りであったが、どうもポピュラー音楽の使い慣れた和音進行が気になって私は今ひとつ集中できなかった。が、柳澤さんの歌はこの前半に大きな比重がかかっていたようで、大変な熱演で圧倒された。
ああした和音、例えば9の和音の扱いひとつとっても、上手いのだけれどそれはアメリカのポップスでよくある進行で、きれいに仕上がっていても今ひとつピンと来なかった。
また、私ごときが言うのは僭越だと分かっているが、敢えて一言いうならば、詩が歌に向いていないこともあるのか、言葉と音楽の一致という点であまりすっきりしないままで終わってしまった曲もあった。
多分に私の個人的な感想であるので、批判として受け取ってもらうのは困る。私は伊藤氏の優れた音楽性、創造力を高く評価している者である。従って、これはその彼への問題提議でも弱点の指摘などではなく、私の作曲、特に歌へのこだわりがこんな感想となったと受け取ってもらえればありがたい。

後半は、リヒャルト・シュトラウスの歌曲が四曲。大好きな「明日」や「夜」などが歌われた。少し疲れもあったのかわからないけれど、このリヒャルト・シュトラウスの歌曲は心底魅せられてしまった。
声量も豊かで、声質がとてもチャーミングだ。この人は神様から良いものをたくさんもらって生まれてきた人らしい。
立ち姿もさすがプロ、大変見栄えのする美しさで、観客を魅了していた。年齢のことは女性に対して失礼なので、ここでは触れないが、それを超越するステージのする姿で、立ち姿がシャンとしていて、やはりステージに立つ人はこうでなくては…などと、自分は関係ないので、勝手なことを言っているが、要するに魅了されて終わったのである。
続いてプッチーニの「ボエーム」から「私の名はミミ」、そしてヴェルディの「運命の力」から「神よ、平和を与えたまえ」を歌い、アンコールに意外にもラヴェルの「トリパトス」を歌い、次いで中田喜直氏の金子みすゞの詩による童謡集「ほしとたんぽぽ」から「こだまでしょうか」が歌われてコンサートは終わった。
彼女が、私たちのノイエ・ムジカ東京の6月の定期に出てくれることになっている。何てうれしい話なのだろう!!彼女から学ぶことはとても多いと思う。良い機会になってくれれば良いのだが…。

ともかく、とても良い一日となった。

写真は引き続き、ルガーノのサン・サルヴァトーレ山山頂からの風景。これはイタリアのコモの方角の景色。夏は大した高度でなくても、結構涼しい。逆にルガーノは結構蒸し暑いので、夏の滞在は避けた方が良いかも…。
柳澤涼子さんのコンサートに出かけた_c0042908_2373298.jpg

by Schweizer_Musik | 2011-12-12 23:07 | コンサートの感想
<< 子育てネットのクリスマス・コンサート グリンカの悲愴三重奏曲を聞く >>