作曲者 : BEETHOVEN, Ludwig van 1770-1827 独
曲名 : 弦楽四重奏曲 第12番 変ホ長調 Op.127 (1823-25) 演奏者 : エンデリオン四重奏団【アンドリュー・ワトキンソン(vn), ラルフ・デ・スーザ(vn), ガルフィールド・ジャクソン(va), デイヴィッド・ウォーターマン(vc)】 CD番号 : WP/2564694713 はじめて聞いた演奏はジュリアード四重奏団のものだった。高校1年の初夏のことだったと記憶している。最近のことはすぐに忘れるのだけれど、こういうことは憶えているもののようである…(笑)。 冒頭の充実した、広がりのある響きに一発で夢中になったものである。愛称のようなものがないためか、ややマイナーな位置にあるが、後期弦楽四重奏曲の傑作群の最初を飾る作品である。まさに人類の至宝と言うべき作品である。 良い演奏はいくらでもあるけれど、最近はもっぱらこのエンデリオン弦楽四重奏団で聞くことになっている。前作の11番「セリオーソ」の後、14年間、弦楽四重奏曲に手をつけることはなかったベートーヴェンであったが、ガリツィン公爵からの依頼でこれと13番と15番の3曲がロシアの貴族におくられたこともあり、これをガリツィン・セットと呼ばれることもあり、私などはその名前で最初親しんでいた。 この曲は、第九やミサ・ソレムニスの作曲時期と完全に重なっている。晩年の傑作群がどんどん完成していた時期にあたり、第12番も極めて充実した傑作中の傑作なのである。 長大な第2楽章の変奏曲は、32番のソナタの第2楽章などとも共に、ベートーヴェンの書いた変奏曲の傑作である。変イ長調で書かれているが、途中でホ長調に転調して意表をつく。変奏曲で主音が移動するのは古典期のものとしては、やや異例とも言えるが、それがロマン派の変奏曲に与えた影響は少なくはない。 14番でも長大な変奏曲を彼は書いているが、イ長調の主調に対して緩徐変奏で同主調のイ短調に行って、古典の定石を踏みながらもコーダでヘ長調をさわってみせて、この12番での方法を再び使っている。 エンデリオン弦楽四重奏団の演奏は、全てにおいて見事なもので、水も漏らさぬアンサンブルは実に美しい。かつてはこうした傾向の演奏は響きがきつく感じたことが多かったけれど、最新の録音ではそうしたことはなく、間接音を適度に取り入れた見事な録音も相まって、素晴らしいCDとなっている。 広くお薦めできる名盤である。 写真はチューリッヒ、リンデンホーフの丘からリマト川越しにチューリッヒ大学などを撮ったもの。
by Schweizer_Musik
| 2011-12-18 13:55
| CD試聴記
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