作曲者 : CANTELOUBE, Marie-Joseph 1879-1957 仏
曲名 : オーヴェルニュの歌 演奏者 : ネタニア・ダヴラツ(sop), ピエール・デ・ラ・ローシュ指揮 管弦楽団 CD番号 : VANGUARD/OVC 8001〜2 懐かしの名盤である。高校の頃に買って、よく聞いたものだ。曲との出会いは中学の時に買ったLPに「子守歌」が入っていて、それがとても気に入って、この名盤を知り、高一の頃に買った。いつだったかはもう憶えていないが、ピエール・デ・ラ・ローシュが大阪国際フェスティバルに来日した時、FMなどでの紹介も結構いい加減なものだったけれど、こればかりが流されていたことを思い出した。 オケはそう上手くなく、ソロは時に苦しい音を出していたりするけれど、全体にそつなくまとめたという印象である。が、何と言ってもこの音盤の魅力はネタニア・ダヴラツの歌だ。 ウクライナ出身で1931年生まれ。1947年にイスラエルに家族で移住したユダヤ系のソプラノで、1963年と1966年にウィーンでの録音当時、彼女は30代前半で、まさにソプラノとして最高の時期だった。私は言葉のことは全くわからないが、オーベルニュ地方の方言を見事に表現していると、言われている。フランス語ですらよくわからない私なので、発言の権利はないけれど、歌は自然な発声で、もともとは民謡だったこともあるのだろうが、歌い上げるというのではなく、語るかのように自然体で歌う。高校生当時、これがとても新鮮に聞こえたものだ。声をよく響かせて、歌い上げるようなスタイルがクラシック音楽の歌い方だと誤解していたからだが、今ではこうした歌い方も珍しいものではなくなったけれど、当時はちょっと珍しく思ったものだ。 それにしても、カントルーブの編曲はどれも水際立っている。この成果があるからこそ、そしてこれが売れたからこそ、多くの民謡のオケ伴への編曲が生まれたと言っても過言ではない。 ハーモニーの付け方だけでなく、オブリガート、ポリフォニックな技法など、どれもが実に上手いものだ。そして何よりもインスピレーションがあると思う。1音1音に曲の表現したい世界が明確に示されていると思う。 だからこの曲が時と国を越えて、これほど長く愛されているのだろうと思う。 ダヴラツの歌は、私のこの曲に親しむ原点となったものだ。今ではキリ・テ・カナワ、アップショー、フレデリカ・フォン・シュターデなどの素晴らしい名演を所持し、楽しんでいるのでこのダヴラツ盤を取り出すことは滅多になくなった。ラ・ローシュの指揮も未だにこれしか持っていない。確か、アイスランドだったかあちらの方のオケでの録音したCDをずいぶん前に見かけたかすかな記憶があるけれど、この録音の美しい思い出故に、買わずにそのままとなったままである。 大阪国際フェスティバルでの演奏はブッフビンダーのピアノでベートーヴェンの「皇帝」などを大阪フィルを指揮したのを聞いた。まずまずの演奏だったと記憶しているけれど、これも高校生の頃のことなので、細かなことは忘れてしまった…。 写真はメールスブルクのお城。峡谷にかかる橋を撮ったもの。今朝2回目の懐かしの「子守歌」がはじまったところ。ダヴラツの歌う「子守歌」は圧倒的な美しさだ…。
by Schweizer_Musik
| 2011-12-19 09:50
| CD試聴記
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