授業がはじまって一ヶ月。五週分の授業が終わった。私の行っている学校はクォーター制をとっているので、もうすぐ試験であるが、最初の試験までもう一気に高めて行っていないといけないのが特徴で、この最初の一ヶ月が勝負のようなところがある。
そしてようやくその一ヶ月が終わり、試験に向けて仕上げをはじめたのだが、ここでやっと一息だ。 モーツァルト、ベートーヴェンなどとは随分長いこと疎遠になっていた気がする。現代音楽系の授業を2コマ持ったので、その準備にコンテンポラリー系の作品を聞いてばかりだったことも大きい。明けても暮れても十二音音楽という日もあり、たまになら良いのだが、毎日となると難行苦行になってしまう。 ただ聞くだけでは話にならないので、楽譜を調べるという作業を加え、それをどう書くのかというところまで説明できるように調べておかなくてはならないのだが、これが意外と面倒で、自分がわかれば良いだけなら、1時間ほどスコアを調べて音を聞いたら良いのだが、説明をどうしようかと思って調べると倍以上かかってしまう。結局授業の下調べがやたらとかかってしまうのだ。 譜例を作ったりという資料作りをしていると、もう学校からもらうギャラでは合わなくなってしまうが、それは受けたのだから今更文句を言う気は全くない。それどころか、授業を受け持つことで、昔の学生時代に戻ったような気になり、夢中に調べているようなところがあるので、むしろ感謝しているぐらいだ。 それにしても、最初無理にペンデレツキやミニマルをとりあげたのは失敗だった。アカデミーの学生たちはすでに一年以上そうした作品を勉強し、ドデカフォニーやメシアンなどの作曲法も学んだことになっているので、そこから始めようとしたのだが、肝心のウェーベルン以降のトータル・セリエルなどのブーレーズなどの音楽にもほとんど触れておらず、十二音も十分に分析して理解できている訳でなさそうだからだ。 音楽を聞いただけでは、十二音音楽は勉強にはならないのだが、まるで久石譲のアニメの音楽を聞くようにウェーベルンやベルクを聞いているのには参ってしまう。 というわけで、ウェーベルンのパッサカリアやバルトークの弦・チェレを持っていったのだが、これでも難しいことがわかる。どうも理詰めで音楽を書くというものに慣れていないのだ。ラヴェルやドビュッシーでも決して感覚だけで音楽を書いていたのではないのに、雰囲気だけをとらえているのだ。これでは理解したことにはならない。 という訳で、もっと易しいものにしなければということで、バルトークの「ハンガリー・スケッチ」を分析。もう現代音楽とは言えないかも知れないが、この民族主義的で平易に書かれた作品を細かく分析するところから始めることにした。 細かくスコアを読むということは一体どういうことなのかを、分析し、曲の構造や音の組織、モード、異なる調性を組み合わせての多調性という概念、オーケストレーションなどを少しでも理解したあたりで音楽を聞く。そうすると、音楽が立体的に聞こえてきて、今何が起こっているかを理解しながら聞くという体験をするのだ。 こうすると、ただ聞いて「きれいな曲」などとぼんやり感じていただけの一般音楽愛好家から、ちょっぴり専門家へと彼らが変身するという具合である。 やっとこの辺りがわかっていないということが見えてきて、ピントが合ってきた。他のクラスはもっと前から入り込んでいたのだが、アカデミーの学生達の授業だけどうもピントが合わず、毎回試行錯誤だったので・・・。 朝、早起きしてこんなことを書いているが、これができるようになったのも、やっとのことだ。すっかり世間の音楽界の様子が疎くなってしまっている。とは言え、それどころではない。原稿を書かなくては!!バーゼルについての二つの文章を絶対に今日書き上げよう。
by Schweizer_Musik
| 2005-05-21 05:51
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