夏の音楽のシリーズ、第四回は歌曲の部門です。
まずは、1838年から1841年にかけて書かれたベルリオーズの歌曲集「夏の夜」Op.7から。T.ゴーティエの詩による六曲は、オーケストラとソプラノのために書かれたもので、なとも洒落た作品。ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス(sop),シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団(BMG/BVCC-7059〜67)が良いのですが、シャルル・ミュンシュがちょっと身勝手な合わせでちょっと興を削ぐのでフレデリカ・フォン・シュターデ(mezzo-sop),小澤征爾指揮ボストン交響楽団を聞くことが多いです。でもこの録音、たしか廃盤になってから長かったような・・・。(SONY Classical/32DC 349)とすると、レジーヌ・クレスパン(sop),エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団(DECCA/POCL-6023)かな。 同じフランスの作曲家によるものでは、ヴェルレーヌの詩によるフォーレの「やさしき歌」Op.61の第7曲「それはある夏の明るい日」。私はやはり古い録音ではありますが、カミーユ・モラーヌのバリトン、ピエール・マヤール=ヴェルジェのピアノによるものが一番好きです。昔、モラーヌのエラートへの録音がまとめて6枚組で出たことがありますが、その中に入っていた演奏です。(ERATO/WPCC-3391〜6) 歌曲の王シューベルトから一曲「夏の夜」D.289bは、F.G.クロップシュトックの詩による名作。エルンスト・ヘフリガー(ten),イェルク・エーヴァルト・デーラー(hf)による名唱でいかがですか。(claves/CD 50-8611) シューベルトの伝統を引き継いだのはシューマン。そのシューマンのハイネの詩による名作、歌曲集「詩人の恋」Op.48の第12曲に「 明るい夏の朝に」という曲があります。フリッツ・ヴンダーリッヒ(ten),フーベルト・ギーゼン(pf)の演奏に尽きるのではないでしょうか。こういう歌こそ奇蹟の歌なのでしょう。(Grammophon/POCG-2616〜20)何度も再発売を繰り返した名盤ですから、番号は気にしないで下さい。 シューマンに続いて歌曲の伝統を受け継いだのはブラームスとヴォルフでしょう。まずはハイネの詩によるブラームスの夏の夕べOp.85-1 (1878)を。ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのバリトン、イェルク・デムスのピアノによる演奏でどうぞ。(Grammophon/463 509-2)若々しいフィッシャー=ディースカウの声は、後のどの録音からも失われてしまった輝きを持っています。 M.グローエの詩につけた「やさしき夏の夜よ、来たれ」Op.58-4は、あまり有名とは言えませんが、柔らかな表現が心地よく、私は時々取り出しては聞く作品です。フィッシャー=ディースカウとバレンボイムによるブラームス歌曲全集の中の録音しか私は知りませんが、不満を覚えたことはありません。(Grammophon/POCG-9076〜83) H.シュミットの詩によるブラームスの「夏の夕べ」Op.84-1は同じグラモフォンのブラームス歌曲全集の中でジェシー・ノーマンとダニエル・バレンボイムの演奏で収められている作品。彼女の声を神の声と評した評論家がいましたが、私もこの歌を聞くとすごく説得力を感じてしまいます。 もう一人の歌曲の王フーゴ・ヴォルフの作品からは女声のための6つの歌の第5曲「夏の子守歌」をあげておきたいと思います。エリーザベト・シュヴァルツコップ(sop)とヴィルヘルム・フルトヴェングラー(pf) の奇蹟を体験するためにこの一枚は絶対にはずせないものです。(SEVEN SEAS/KICC 2300 )1953年8月12日ザルツブルク音楽祭、ヴォルフ没後50年記念リサイタルでのライブ録音です。 このブラームスとヴォルフのリートの伝統を継いだのはスイスの作曲家シェックでありました。 シェックの夏の夕べ Op.4-1は、ハイネに詩によるもので、ブラームスにも同じ詩によるものがあります。ハンナ・マッティ(mezzo-sop)とクリストフ・デマルメルス(pf) によるスイスMGBのCDをどうぞ(CD 6118)。MGBのHPからも購入可能です。 J.G.ヤコビの詩による「夏に」Op.17-1は、クリスティーネ・シェーファー(sop)とウォルフラム・リーガー(pf)による名演があります。確か、シェーファーのデビュー録音ではなかったでしょうか?スイスのJecklinから出ています。(JD 671-2) このシェックの傑作として名高い「10の歌」Op.44はシェックの友人でもあった文豪ヘッセの詩によるものです。その第八曲「夏の夜」はディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(br)とカール・エンゲル(pf)の演奏でどうぞ。(Grammophon/463 513-2) 随分シェックをとりあげてしまいました。でももう一曲。ミューレホフの詩による「夏の夕」Op.78は、ニクラウス・チューラー(br)と名ピアニストのクリストフ・ケーラー(pf)の演奏で出ています。(Jecklin-Disco/JD 673-2) シェックになると夢中になってしまうものですから、つい取り上げすぎましたね。 シェックとともにドイツ・リートの伝統を受け継いだのはリヒャルト・シュトラウスでしょう。彼の「4つの歌」Op.31は、R.デーメルの詩による歌曲集ですが、その第1曲「青い夏」は、フィッシャー=ディースカウ(br)とジェラルド・ムーア(pf)の全集の形で出ていたボックスの中に入っていました。(EMI/TOCE-6776〜80) 新ウィーン楽派の作曲家、アルバン・ベルクの初期の7つの歌の最後の曲に「夏の日々」というホーエンベルクの詩につけた作品があります。スイスの名歌手ブリギッテ・バレイズの歌、ウラディーミル・アシュケナージ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団の演奏は得難い名唱として推薦したい一枚です。(LONDON/POCL-1371) まだまだ夏の音楽は続きます。
by Schweizer_Musik
| 2005-06-25 22:50
| 音楽時事
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