シベリウスの交響曲第6番について思うこと
シベリウスの交響曲第6番はあまりにも美しい作品で、まだ高校一年生の生意気盛りで初めて聞いた時には、唖然としてしまったものです。
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これはドーリア旋法で書かれているのですが、ドーリア旋法についてラヴェルのピアノ三重奏とあわせてこの曲を以前に例にあげたことがあります。
実際、ドーリア旋法は意外に多く使われており、私も作曲の際に比較的よく利用していました。(昔の話ですが・・・)
多少ドーリア旋法に手を加えて使うことが多いのですが、この曲のドーリア旋法の音階を次にあげておきます。c0042908_2331496.jpgなんてラヴェルと違うのでしょう。同じ音階を使っているとは思えないほどです。これはフィンランドの民謡の音階を使っているからという意見もあります。確かにそうかも知れませんが、それがドーリア旋法とどういう関係にあるのかと私にはわかりません。しかし、同じ音組織でありながら、極めてユニークな響きを作り出していることは間違いないでしょう。
厳格なドーリア旋法ではなく、続く部分ではファの音に♯がつけられて、瞬間的ですが、ミクソリディアかと錯覚をおこさせて、すっと戻ります。これは拡大されて繰り返されるのですが、この続く部分を少しあげておきます。

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ついでですので、D音を根音とするミクソリディア旋法のスケールもあげておきます。c0042908_7371855.jpg



このちょっとミクソリディアのような、ピカルディーの終止のようなところを過ぎると、オーボエにスケールが出てきて、フルートに新しい動機が出現します。フルートとオーボエの部分をあげておきましょう。
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この美しいメロディーは、冒頭のフレーズから導き出されたものです。
まず、c0042908_8171118.jpgというフルートのメロディーは最初のメロディーの4小節目の



c0042908_8181166.jpgというメロディーを反行形にしたものであり、つづく



c0042908_8184929.jpgというメロディーは冒頭の



c0042908_8193717.jpgというメロディーから導き出されたと考えられます。



続く部分は、この動機を中心にしばらく展開し、新しい部分に入ります。

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ここからテンポは変わっていないのですが、音符が細かくなったのでAllegroになったように思ってしまいそうです。リディア旋法になっていますが、これはドーリア旋法と平行調の関係とも言える旋法で、第2テーマと考えてもよいかも知れません。ここから明らかに音楽は生き生きと活発になっていきます。
テーマは冒頭から基音がC音からB音、As音へと変化していく転調を内包したものです。そして、この新しいテーマにより第1楽章は発展していきます。

この音楽をはじめて聞いたのは、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団のものでした。モノラル録音を擬似ステレオにしたものでしたが、そんなことはともかく、なんとも美しい音楽がゆったりとした時間を漂うように流れていくのに、私は息を呑んだのでした。
今なら、ネーメ・ヤルヴィがエーテボリ交響楽団と録音したものか、クルト・ザンデルリンクがベルリン交響楽団と録音したものが特に好んでいます。私が尊敬する渡邊曉雄氏(一度だけお会いしてお話をさせていただいたことがあるのですが、本当に紳士でやさしい方でした!!)の2度目の録音を聞くのが好きです。カラヤンの新しい録音はちょっと色っぽいところがあり、曲の厳しい世界に良い味付けになっていて、初めての人にはいいかも知れません。もちろん、エールリンクやコリンズの古い録音、あるいはデイヴィスやベルグルンドの楷書風の演奏も捨てがたいものがありますし、ウラディーミル・アシュケナージやロリン・マゼールの全集も・・・。ああ、また節操がなくなってしまう。
いずれにせよ、この作品は愛聴する一曲であり、もっと聞かれるべき素晴らしい名品なのですが、いかがお考えでしょうか?
by Schweizer_Musik | 2005-06-30 10:05 | 授業のための覚え書き
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