サティのジムノベディ第1番の主観的分析
この美しい作品を敬意を込めてあのドビュッシーが管弦楽に編曲しています。この一事のみで、この小品の持つ意味がわかるというものです。
美しい、ただの癒し系の音楽などと切って捨てる人も私の周りにいないでもないのですが(その人はクラシック音楽なんて全て癒し系ではないかと凄いことを言っているの、あまり相手にする必要もない?)それ以上にすこぶる単純な伴奏の上に、フォーレと全く異なる方法でモード(旋法)を使って美しいメロディーをのせてみせたサティの成果であると思われます。

実際、この曲は「あなたがほしい」というシャンソンとともに、サティの最も有名な作品となっています。もっと重要な作品が他にもあるのに、ちょっと不公平なほどこの曲は人気があります。
クラシックの名作がポピュラーな人気を得るということは極めて稀なことであり、その極めて稀な例がここに見いだされるというわけなのです。
さて、サティのジムノベディ第1番はどういう曲なのでしょうか。じっくりと見ていきましょう。

全体としての構成はA(a-b) - A(a-b)の二部形式です。同じ音楽を少しだけ変えて繰り返すだけ。和音は?ちょっとポピュラー風のドミナントのベースに二度の和音を鳴らしたりしていますが、基本的にはそう難しくはありません。
テーマをつぎにあげておきましょう。
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一見ニ長調ですが、ハーモニーはIV - I というハーモニーの繰り返しで出来ています。
メロディーは全くニ長調のようですが、Fis - Aの短3度、H - Dの短3度、そしてA - Fisの短3度という三つの短音程で出来ていることがわかります。
このメロディーの優美さはこの短音程を主に下降するメロディー・ラインで使うことで生まれています。
この中に二度にわたって4度下降が含まれていますが、このメロディーに続いての後楽節でこの4度音程が上行形で出てきて、大きな節目を作ります。
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この節目は、たった二つの和音を行き来していただけのところから、ホ調へと転調すると同時にハーモニーも流動的に大きく舵をきったのです。
後半bを見ていきます。
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aが穏やかに二つの和音でほとんどが出来ていたのに対して、後半のbは、和音がどんどん変化していくのが特徴です。一方、前半がG - Dのオルタネーティング・ベースであったのに対して、後半はD音を中心とした部分と、E音を中心とした保続音を中心としているのが特徴です。
メロディーは前半が長い八小節のフレーズで出来ていたのに対して、後半は四小節のフレーズを組み合わせて出来ています。
このように、Aの前半は「静」を中心としているのに対して、後半では「動」が中心となっているのです。
このメロディーが盛り上がり、4度の跳躍が力強く出て前半のクライマックスが築かれます。
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フレーズの最初に4度の跳躍を持ってきていますが、この楽段の最後は4度を中心に出来ていることに気がつきましたか?
こうして4度を強調することでカデンツのバスの4度跳躍がエコーしてまた戻っていくのです。

そしてもう一度、ほとんど変化することなく音楽は繰り返されますが、最後のセクションだけ大きく変化しています。それは同主調に転調しているのです。終わり方は導音のない教会旋法を強く意識させるものとなっています。
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おそらくはこの教会旋法の使用に対して、ドビュッシーが強く共感したのではないでしょうか。それに、この優美なメロディーに。
この切りつめた素材を平明な形式のもとに並べただけの単純な作品が、不滅の光を放っていることだけは間違いないことのようです。
演奏は・・・あまりに数多くの演奏、編曲が溢れていますが、オーケストラ版は若いアンドレ・プレヴィンが指揮するロンドン交響楽団の演奏(BMG/BVCC-37304)を、ピアノ版はアンヌ・ケフェレックによるもの。Virgin/JUK-29(VC 7 90754-2)
by Schweizer_Musik | 2005-07-10 20:06 | 授業のための覚え書き
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