ブルックナーの交響曲第7番考察
先日、皇太子殿下が結婚行進曲を演奏したと新聞やテレビのニュース、ワイドショーなどで取り上げられていたが、ブルックナーの第七番の交響曲でも舞台に上がられていたとか聞く。
で、ひょっとすると皇太子殿下もブルックナーがお好きなのでは、などと思いつつ、第7番を取り上げることにした。実は、ブルックナーの数ある作品の中で、私はこの曲と続く第8番が特に好きなのだ。第4も第5もそして第6も嫌いじゃない、決して。しかしこの作品を愛することだけは別だ。この曲によって私はブルックナーがやっと好きになれたのだから。

全曲の主題の統一がブルックナーの作品の中でも最も緊密に行われた作品として、この交響曲第7番があるのではないか。
第一楽章の第一主題は全曲のモットーとなるもので、次のように広い音域を持つ。
c0042908_11425814.jpg

このメロディーは長三度下のC音を根音とする調に一時的に転調し、その和音を主調のドッペル・ドミナントの第5音半音下方変異という和音に読み替えて属調上のカデンツを続けるという転調を含むものとなっている。
ここにあげた後は平行調転調からもう一度属調に戻っていくという過程があるのだが、こうした転調を含む主題というのは、その後の複雑で細かな転調を予告するものでもある。
このテーマは、全曲のテーマの核となっていくので重要。特に冒頭の7つの主和音の分散和音は注目しておくこと。
この主題はチェロとコンバスで始まり、続いてヴァイオリンなどによって繰り返されて確保されるとすぐに第二主題の提示に移る。第二主題は第一主題の後半の順次進行の部分から作られている。
次に第二主題を示しておく。
c0042908_12452940.jpg

第二主題の大胆な転調は聞く者に強く印象に残るものである。属調に転じて始まるのは古典的な作法であるが、すぐに同主調転調からエンハーモニック転調を挟んで遠隔調に転調していく。
第一主題の幅広い音程に対して、順次進行を中心としたテーマは、リズム的に同じ素材から始まっているので、性格的な対照性は薄く、第三主題の方がより強烈な印象を与えるものとなっている。
c0042908_13521022.jpg

これは、第二主題の反行型で出来ている。つまり、第二主題がH-D-Fis-B(H)で出来ているのに対し、第三主題がH-Fis-D-Hというようになっており、反対に動いた結果だということがわかる。
リズム的には、第一主題から次第に細かなリズムへと変容していくことも注意しておきたいところだ。

続くのは展開部。
展開部は第一主題が反転して始まるが、気をつけて聞いていないと別の主題に聞こえてしまうほど、この反転の効果は絶大だ。
c0042908_14392871.jpg

この第一主題の反行形に第三主題の動機がフルートの全くの裸のソロが組み合わせられる。
c0042908_1522687.jpg

反行音形に変化するのはこれだけではない。第二主題がこれに続いて反行に変容して出てくる。
c0042908_1539882.jpg

譜例をよく見て頂ければおわかりだと思うが、この反行形となった第二主題だが、それに重なってすかさず元の第二主題が同時に組み合わせられていて、この形が偶然でないことを明らかにしている。
この元の形と反行音形とが、同時に出てくるというアイデアは、以降もしつこいほどに繰り返されていく。(しつこいのはブルックナーの特徴の一つ!)

続いて第一主題が切迫したカノンで展開されていくが、この辺りは完全に教会音楽風であり、オルガン的に私には感じられるが、みなさんはいかがだろうか。
c0042908_16164843.jpg

この一小節遅れでのカノンは間もなく更に進化を遂げる。
c0042908_16365123.jpg

元の形と反行形が一拍遅れ(二分音符一個分)で出てくる4声のカノンとなって出てきて元の第一主題の後半がこれにつながり、美しい対旋律がこれに絡んでいき、第二主題が更に転調を繰り返して展開されていき、やがて再現部へと続く。
ほぼ型どおりの再現部の後、第一主題の原型と反行形が壮大に奏でられて、楽章が雄大に閉じられる。

この項目続く。
by Schweizer_Musik | 2005-07-17 16:47 | 授業のための覚え書き
<< ブルックナーの交響曲第7番考察... ブルックナー 交響曲第3番 ヴ... >>