やはり三限分、全く異なる内容で授業を行うのは、もの凄い負担である。朝から頭の中は授業のことでいっぱいであった。電車は止まるし・・・(品川から東京の横須賀線が信号機故障で午前中ストップ)。おかげで東海道は満員であった。
オーケストレーションの授業は弦楽アンサンブルの書法についてということで、すでに弦楽四重奏の曲を全員が書き、その音だし(試演)をすませているので、コントラバスの役割について簡単な説明と、コンバス入りの音源とコンバス無しの音源(モーツァルトのアイネ・クライネを使用)で実感させた後、チャイコフスキーの弦セレの冒頭のスコアを大譜表に直してその配置(ヴォイシング)を調べる。 あれは上から下までのトゥッティと、メロをコンバスとチェロのオクターブユニゾンにしたものと、コンバスを外した高音だけのものという3種類、それにオクターブさげたらどういう音がなるかということまでそのまま実感できる、教える側としてはとても都合が良い曲である。 これで1時間20分ほどが終わり、続いてアカデミーの学生たちの授業は現代音楽研究といういさましいタイトルの科目の名前がついている手前、つまらない音楽をとりあげるわけもいかない。 今学期は十二音音楽について説明しており、シェーンベルクの木管五重奏からはじめてウェーベルンのピアノのための変奏曲が先週で、今日はもう十二音はやめようかとも思ったが、更に深めようかという気になり、弦楽三重奏をとりあげた。 大変な音楽である。2楽章一度にとりあげたが、実際それはどこまでやれたか怪しいものだ。ソナタ形式の復習をせねばならないことになったので、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの五番をなんと30年ぶりに弾いたが、なんとまだ憶えていた・・・。自分で自分を褒めてあげたい気分。弾きながらここは第1主題提示、確保、推移第1群で転調し、第2群で調性の確保、そして第2主題などと説明したが、いやーその演奏の酷いこと・・・。ピアノはとても良い先生に習ったのだが、絶対のその先生の名前を出せないなと思った。 まぁ、ピアニストでないので、このあたりはご容赦頂いて、第2楽章がソナタ形式で出来ていることと、ソナタの形式を結構踏襲してウェーベルンが書いていることなどを説明して終わる。 最後はアトナール・コンポジションという授業で、先週はCharles Ivesの「宵闇のセントラルパーク」をとりあげたので、今回はジャズなどのアメリカ文化の影響を受けて出来た1920年代から1930年代の音楽についての分析ということで、オネゲルの交響的運動「機関車パシフィック231」をとりあげ、ついでにラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲などのブルースの部分などを聞かせたり、スコアを見せたりして、多調性とブルーノートの彼らのとらえ方のユニークさについて少し話す。 しかし、当時はタンゴとジャズ、ラグタイムの区別が無かったのだから大らかな時代だったのだろう。そんなに情報が行き交っていなかったことも大きい。情報の量と質が今とは比べものにならない当時だからだろうが、だからと言って今の方が彼らの音楽よりも優れた物が書けているかというと、全くそんなことはない。 音楽は情報が豊かになったからといって、良くなるようなものではないのだ。こんな話をしながら、オネゲルのユニークなオーケストレーションなどについて注意を喚起するようにして説明。 これが終わると一人だけ個人レッスンがあるのだが、これがバリバリのポピュラーの学生で、ロックやら色々作って来てくれる。即年はほとんど楽譜も書けなかったのに、たった一年でよくぞここまで書けるようになったものだ。今日は昔流行った「サニー」というポピュラー・ソングそっくりのコード進行の曲を意気揚々と作ってきた。彼は「サニー」なんて知らないし、自分で一生懸命考えたらしい。しかし、どうしても似てしまうのはどうしてだろう・・・。こんなことをやって一日終わり、報告書と欠席の報告をして、再来週の音だしの打ち合わせをして家路についた。日本シリーズは残念だったが、本当に残念だったのは見れなかったことだ・・・。ああ残念。それでも今日は疲れたけれど充実した一日だった。これは近くの駅のコーヒーショップで書いている。そろそろ帰ろうか。
by Schweizer_Musik
| 2005-10-26 22:31
| 授業のための覚え書き
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