伊福部昭のリトミカ・オスティナータ考 -03. 全体の構成
第3部となる展開部について。途中にゴジラのテーマの先駆けのようなフレーズも出て来るこの部分は曲の中核を成す。
前の第2テーマをもとにしたピアノの即興的なパッセージが挟まれて第3部に突入する。第3部のテーマとなるのは次のフレーズである。
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このフレーズは太鼓だけの伴奏にのってバス・クラリネットのソロで提示され、オクターブ上げてファゴットで繰り返され、さらにミュートをつけたトランペットに伴われたクラリネットが動機を繰り返して、弦に移る。4/8拍子で八分音符4つ打つ太鼓のリズムが繰り返すうちに大きく発展していくのだが、この部分がどことなくあの「ゴジラ」のテーマに似ていなくもない。また四分音符4つのリズムはどこかストラヴィンスキーの「春の祭典」の部分を思い出す。
前にも触れたこの作品のもととなった、ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲ではもっとあからさまに「春の祭典」の第1部の「春のきざし」と似た部分がある。またゴジラのテーマを彷彿とさせるフレーズがこれ以外にも数多く出てきていて、伊福部昭がこの曲の「再創作」において、そうした部分を可能な限り退けていることがうかがわれて興味深い。
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これに続いてコール・アングレとファゴットのユニゾンで持続音が出て来る。ピアノは主題の変奏を執拗に繰り返しながら、対旋律のような形で出て来るのだが、すぐにコール・アングレとヴァイオリンのユニゾンで次の印象的なメロディーが出て来る。
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「ゴジラ動機」が「春の祭典」が繰り返され、ヴァイオリンのソロも飛び出すと、上の伸びやかなメロディーは更に発展・縮小してピッコロとトロンボーン、クラリネット、コール・アングレの3オクターブのユニゾンで繰り返される。細かなリズムと伸びやかなメロディーとの対比がとても印象的である。
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この音楽の間にふっと次の楽想が割り込む。
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これは、第3部冒頭のメロディーの変奏で出来ているのだが、完全なドリア旋法で出来ている。しかし、それは一瞬のことで、四度のテトラコルドにこれは分解され、わらべ歌のような力感が音楽に加わり、クライマックスに向かう。
絶頂で「春の祭典」風の動機がフォルテからピアノへと繰り返されながらディミヌエンドしていき、再現部への移行部へと入る。
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続く部分は四分音符を基本としたAdagio tranquilloである。これは展開部から最初の部分へと戻るための移行部だ。
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繰り返された後、冒頭のホルンのソロのメロディーが現れる。
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この二つのメロディーがフルート、バイオリンで繰り返され、最後に冒頭と同じホルンに出てきて、再現部へと突入する。
再現部はほぼ型どおり行われ、コーダを経て興奮の内に曲を終わる。

この項、おしまい。
by Schweizer_Musik | 2006-04-09 10:10 | 授業のための覚え書き
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