第1部 序奏
序奏部は、前半と後半に分かれる。前半は弦のハーモニクスによる出発前の機関車の様子が、コンバスのトリルの上に描かれる。 コンバスとホルンによるGis音が五拍の休符を伴い4回打たれると音楽はクレッシェンドをはじめる。 序奏部の後半は、車輪が巨大な重量感を伴って動き始める。これにはチェロとコンバスの低い和音にファゴットとコントラファゴットがユニゾンで奏でられるのだが、これが弦のエコーのように聞こえるとても面白いところでもある。 テンポが少し上がり、全音符から付点二分音符、二分音符、二分音符の三連とリズムが少しずつ縮小され切迫感をもたせる。と同時に、低いところから少しずつ少しずつ上がっていくように作られている。 この間に、ホルンには前半で現れたコンバスとホルンのユニゾンの音がアクセントのように挿入されていることに気付く。そしてそれも次第に巨大なこの曲のテーマの一部に発展していき、第1エピソードで全体像を現すこととなるのだが、それはもう少し先の話。そのホルン(二本ずつユニゾンで対話するかのように始まるのだが…)の部分をあげておく。 シェーンベルクが室内交響曲第1番で、調性から一定の距離をもたせようと、こうした四度、あるいは五度を重ねた響きに向かったのと大変似ているように思う。(結果は大分違う。何と言ってもオネゲルは「春の祭典」の洗礼を受けた作曲家であり、この作品はそれとは全く違うとしてもあの作品が獲得した地平の上に成り立っているのだ) 第1部 主題提示 主題は二度提示される。ソナタ形式の提示〜確保のパターンで、途中に簡単なパッセージが挿入される。まずその主題をあげておこう。 確保に至る前、機関車らしいというか、よく使われるパターンが出て来るので、聞いている私たちはちょっと笑ってしまいそうになる。 ヴィオラとクラリネットの各小節の四拍目というより2拍目の裏と言うべきだろうが、その音が半音ずつ上昇し、チェロとバス・クラリネットが汽車ポッポでは古典となったパターンを奏でる。それをコンバスとコントラ・ファゴットの裏打ちで弾みをつける。ちょっとした挿入句なのだが、ちょっとした芸が聞かれるところが大作曲家ゆえだろう。 トロンボーンなどが吹いていたパッセージをヴァイオリンとビオラ、それに最低音のフルートとクラリネットが16分音符がなぞり、オーボエとイングリッシュ・ホルンがユニゾンをとる。最高音は譜例に書けなかったが、実はビオラなど低音楽器に、そしてヴァイオリンはG線上の太い音になるように書かれてある。芸の細かさはさすがとしか言いようがない。 続いて第1エピソードが入る。 この項、続く。
by Schweizer_Musik
| 2006-04-16 10:10
| 授業のための覚え書き
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