オネゲルの交響的運動「機関車パシフィック231」考 -04
第2部 第2主題提示
第1部が機関車が走り出すところから、次第に加速していく様子が描かれているとすれば、第2部は機関車が快調に走る様子が描かれ、最高潮に達してやがて重量感あふれる機関車をきしませながら停車する様子が描かれると言えよう。
音楽の構成の仕方としては、展開部のような役割を持っているが、これは大きな二部形式のやり方としては良い方法であろう。最後に主題をストレッタ風に重ね合わせて全体のクライマックスを作るところは、オネゲルの作曲技術の冴えを痛感させられるところでもある。
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c0042908_651221.jpgc0042908_654522.jpgこのテーマは第1部の最後のエピソードから出来ている。即ち主題の骨格となっている音程【B-F-B】が第1部第3エピソードの【Gis-Cis-Gis】の音程を反転させたものであることがわかる。そしてこの第3エピソードが第1部の主題の変奏であることに思い至れば、納得!である。だから、これが出たときにもの凄く印象的だったのだ。なるほど!である。第1部のテーマの骨格だけを次にあげておくが、意外ときっちりと音程を追っているのにも驚く。
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こうして第1部の終わりからテンポをあげて推進力を増した第2部の冒頭にかけて主題の変奏が続く形となっていて、この作品が主題を増幅・発展させていく構造で出来ていることが理解できるのだ。
この後、三連符のスケールが四小節に拡大されると、主題がストレッタで展開される。ここでのストレッタは同度のストレッタで、主題が次々と出て来る面白さはあるが、発展していく感じよりも快速感の方が強く、推移的な性格を有していると言えよう。
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そして第1部の第1エピソードをリズム的に縮小しての展開が続く。
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第1部でのエピソードの場合と同じように同じ楽器が二組に分かれてテーマを繰り返す形で提示される。これでほぼ第1部と同じものがただリズムを縮小して再現されることで、スピードをあげ、快調に進む機関車の姿が浮かんでくる。
再び木管楽器の3オクターブのユニゾンで第2主題が戻ってきて第2部の最初の部分が終わる。

推移から第2エピソードの展開
この曲の序奏でホルンに出てきた動機と第2エピソードの前振りの動機が戻ってくるが、これによって第2エピソードへの前振りの歯切れの良い動機が、序奏での動機から作られていることが明かされるのだ。
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続いて出て来る第2エピソードは主題を1/2に切って、それを半分ストレッタで出している。前の第2主題のストレッタと違い、長6度のストレッタであるから、発展性を強く感じさせるものとなっていることに留意されたい。
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続いて「汽車ポッポ」の動機がとうとう16分音符になって第2主題の動機と対になって出て来ると、いよいよクライマックスに向かって突進していく。このあたりのオネゲルの筆の冴えは凄まじいものがある。オーケストレーションでも極めて注目に値するところで、ラヴェルの「ダフニス」のような派手で「あっ」と言わせるものではないにしても、名人芸を味わわせてくれるところだ。
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これに続いて更に先ほども出てきた第2エピソードの前振りの動機がストレッタで出てきていよいよこの作品のクライマックスへと突入する。

三つのエピソードによる展開
大円団とも言うべきクライマックスは、大体二部に分かれているが、やっていることはほぼ同じで、オーケストレーションが後半に向けてより分厚くなっているだけで、ここはもうイケイケドンドンの世界となっている。しかし、効果としてはそうでも、音楽はただ音を分厚くして、賑やかしているだけではないのは当然だ。
ここで、今までのエピソードが同時にストレッタで出て来るのは圧巻だろう。その中心には第1主題から作られた第1部第3エピソードが置かれ、その周りを第2主題、第1、第2エピソードが折り重なるように出て来る。
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これは、思いつきで書けるような代物ではない。入念に各主題、エピソードを作って、その組み合わせを計画してから(即ち、この部分の仕掛けをまず作ってから)作曲したものであることが明らかで、全くオネゲルの構成力には恐れ入るしかない。
第3エピソード(実は第1主題の変形)をこれでもかというほど繰り返し(エンディング間近ということで、転調はしていない)、クレッシェンドしていく。そしてバスにテーマの動機が移り、いきなり快調な走りにきしみが生じる。c0042908_12574764.jpg

コーダ
この後壮大な下降音形に一部上行音形を組み合わせた「崩れ落ちるような」大きなブレーキがかけられる。
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八分音符三連から八分音符、四分音符三連、四分音符、二分音符三連、二分音符、付点二分音符、全音符と始まりとは逆に音価を次第に長くしていくことで停車を表して、重量感溢れるエンディングを形成する。

機械的な運動が、壮大な交響作品になった例であり、描写音楽(これを一段低く見なすという美学的立場があるが、私は賛成できない。なぜなら描写のための描写は音楽にはなりえず、それを音楽に変換する過程で音楽的な叡智が必要となるからだ。でなければリヒャルト・シュトラウスやドビュッシー、ラヴェルは二流、三流ということになる。そんな馬鹿な!!)として、そして芸術作品として第一級の傑作であろう。
この項、終わり。疲れた!!
by Schweizer_Musik | 2006-04-18 07:37 | 授業のための覚え書き
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