多調性について (3)
多調性は、和音対メロディーの関係ではなく、メロディー対メロディーであるとミヨーは語っているが、それ故、室内楽などで多調性の音楽が多く残されているのである。オーケストラ作品で多調性が用いられるということは滅多にないのは、大きな器の中では多調性は有益な技法とはならないからだ。
メロディー対メロディーという対位法的な用法をクリアするのに都合の良い編成である室内楽、特に声部を聞き分けやすい異種楽器の組み合わせ、例えば木管三重奏や弦と木管との三重奏、四重奏に大変向いていたということである。
多調性は無調に対してそれぞれの声部が調性を守る点がいささか保守的な考えを持っていた。また、無調から十二音という体系化を成し遂げた半音階主義に対して、多調性は体系化は難しく、1910年代から20年代にかけて6人組を中心に数々の作品が書かれたにもかかわらず、1930年代には早くも下火となり、1940年代にはほとんど書かれなくなってしまう。
現在、多調性の音楽として知られる作品の多くが1910年代か1920年代までに書かれたものであるのは、こうしたことによる。
とは言え、モード(旋法)による作曲で多調性は発展をとげたということも、事実である。異なるモードを組み合わせて作る方法など、モードによる作曲法は二十世紀、大いに発展をとげたのだった。この事についてはまた別の機会に書いてみたいが、とりあえず、次は多調性による作曲の実際について説明する。

さて、多調性で音楽を書くためには、それぞれのメロディーを明確な調性感をもって書かねばならない。したがって三度や五度といった音程を多様し、カデンツを意識させるように書かねばならない。理想は古典派以前のメロディーである。
例えば、次のようなメロディーである。
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このヘ長調のメロディーをオーボエに吹かせるとして、対旋律にクラリネットとバスーンをあてよう。クラリネットはヘ長調の長二度下の変ホ長調でやってみよう。バスーンは逆に長二度上のト長調にして、3つの調性を同時にならすと、どこか調子はずれの次のような音楽が出来上がる。極端な不協和は起こらないように気をつけて作っている。が時々、長二度があるのはご愛敬だと思ってほしい。
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この稿を東海道線に乗りながら書いていたら、途中でこうした作例を出した方がいいと思い、横浜を過ぎた辺りから曲を書き始め、東京駅で完成したという即席の作品。ほぼ20分ほどで書き上げたので、たいしたものではないが、今日学校で聞かせたら、意外に評判が良かった…。一生懸命作ったものの評判が悪く、こうしてテキトーに作ったものの評判が良いというのは、なんとも…、あっ、短いから評判が良かったのか…。
音が聞きたいという、奇特な方はこちらからどうぞ…。

2006年5月27日追記
作例をメヌエットとしたのに、トリオがないのはやはりおかしい…。そう今朝思い、15分ほどで即席のトリオを作曲し、なんら反省することなく、アップし直しました。作り直すならちゃんと作ればいいのに、というご批判は至極当然ですが、とりあえずご勘弁を…。楽譜もアップしておく。それからクラリネットはBb管で書いたが、実音での記譜である。
by Schweizer_Musik | 2006-05-26 19:24 | 授業のための覚え書き
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