夢の名演奏 (7)
かつてLP時代にRCAの名盤が廉価盤で出たことがあって、私はそのシリーズでミュンシュやライナー、ラインスドルフといった名演奏家に出会ったのだった。
ライナーの指揮したバルトークやベートーヴェンに心躍らせたことが懐かしく思い出されるが、ミュンシュの指揮したドビュッシーやラヴェル、イベールには全く参ってしまった。高校生になったばかりの私は、少しでもお金が入るとこれを購入して、聞き込んでいった。
ラヴェルの「マ・メール・ロワ」の美しさ、イベールの「寄港地」のエキゾチックな響き(それはモードというものだということは、まだわからなかったが)、ドビュッシーの「海」での光と影の音楽の色彩の奥深さを私はこれらの演奏によって学んでいったのだった。
ベルリオーズの幻想交響曲も心躍る演奏だった。「ファウストの劫罰」の鬼気迫る演奏もまたものすごいものだった。ちょぅどその頃だったと思うが、鳴り物入りでフルトヴェングラーの「ファウストの劫罰」のレコードが出て、それと聞き比べたのだったが、録音も悪かったけれど、ミュンシュの集中力にはさすがにフルトヴェングラーもかなわなかった。
今では、ミュンシュの弟子でもある小澤征爾が、見事な録音を残しているので、これらの作品も新しい小澤の録音で聞くことが多いが、ミュンシュが古くさくなってしまったとか色あせたわけではない。

彼の「機関車パシフィック231」が無いと第一回でぼやいたが、それは、あのオネゲルの第5番の超名演(ああ、これ以上の演奏なんて未だに考えられない!!)があるだけに、第3番、第4番など、まとめてボストン交響楽団と録音しておいてくれたならと思わざるを得ない。
まぁ、フランス国立放送管弦楽団などとのライブなどを集めれば、オネゲルの全5曲の交響曲全集は可能なので、「無い物ねだり」企画としてはいささかピントがぼける。しかし、ルーセルとなればどうだろう。
ラムルー管弦楽団との、あの超名演が残されたおかげで、私はミュンシュのルーセルの交響曲がどうしてこの3番と4番しか残っていないのか不思議でならないのだ。だから初期の第1番の交響曲を不満タラタラでデュトワの録音で聞き(ミュンシュを聞いてしまうと、どうしても安全運転としか思えない。これまた不幸なことなのかも知れない)、第2番は仕方なくマルティノン(これだってデュトワと同じくとても良い演奏なのだが)を選ばざるを得ないが、これはもうなんとしてでも欲しかった。
また、組曲ヘ調は録音しているのに、小組曲は録音していないなんて、なんとも理不尽に思えてならない。組曲ヘ調の見事な指揮は、まさに極めつけ。1930年代に作られたこれも名作である小組曲の方はない!何故なんだ!!これも私が知らないだけなのかもしれないが・・・。
しかし、このミュンシュ、手を出さなかったみたいだが、何故ストラヴィンスキーの録音は無いのだろう?これはまたいつか…。
by Schweizer_Musik | 2006-06-06 01:21 | 夢の演奏
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