夢の名演奏 (10)
ちょっと変則技で10回目にしたい。
ブラームスのドッペル・コンチェルトは、私の好きな曲トップ10をやれば上位に入る大好きな曲の一つだが、この曲にはオイストラフとロストロポーヴィッチ、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団(EMI/TOCE-13077)という空前絶後の名演が残されている。
しかし、この全ての点で完璧に等しい演奏の他、フルトヴェングラーの指揮するウィーン・フィルとボスコフスキー、ブラベツというオケの首席、コンマスと共演したものや、シュナイダーハンとマイナルディと共演したルツェルンでのライブ録音が残されている。
この二つの演奏がすごいのだ。しかし、ウィーン・フィルの方はソロがやや小粒でフルトヴェングラーのスケールに対応できていないのが不満だし、ルツェルンのライブ(日本クラウン/PAL−1072)は一部に脱落があるなど、一般的な鑑賞には向かない。なんと言うことだ!!
この作品はフルトヴェングラーは生涯に度々とりあげており、何故正規録音が残されなかったのか、不思議でならない。
フルトヴェングラーの演奏会記録を見ていると、色々な組み合わせによるこの曲の演奏が行われたことがわかる。中でも最も興味を引かれた組み合わせは、1952年の5月2日にパリで行われたコンサートでは、ヨーゼフ・シゲティとピエール・フルニエがソロを担当して演奏されている。ああこれがどうして録音されていないんだ!妄想の中で、冒頭の二人のカデンツァが聞こえる。フルトヴェングラーの入魂のオーケストラ(ベルリン・フィルだ!)の演奏がそれに応える。きっと白熱した演奏が繰り広げられたはずだ。
シゲティとフルニエ!フルトヴェングラーも含めてこの3人の巨匠は当時、レマン湖畔に住んでいた。シゲティはボウイングが荒れていたという評価があるが、私はそうは思わない。なんて美しい音なんだろう。私の大好きなグリュミオーの対極にあるヴァイオリニストだが、あの厳しさは一つの美である。
対するフルニエは、柔和さを感じられる人も多いだろうが、1958年だったかのジュネーヴで録音した、極めて情熱的なバッハを思い出すならば、ソフトなソロを想像してはならない。
フルトヴェングラー・ファンならば、フルニエとフルトヴェングラーのシューマンのチェロ協奏曲の演奏を思い出されるに違いない。あの壮絶な演奏を思い出す限り、きっとすごいことになったはずだ…。
私の妄想は広がる…。1954年、フルトヴェングラー最後のルツェルン音楽祭。オケはフィルハーモニア管弦楽団。ソリストにはヨーゼフ・シゲティとピエール・フルニエが演奏したブラームスのドッペル・コンチェルトがスイスの放送局のアーカイブに眠っていたものが発見された、なんてことはないな!絶対に。

−1時間後の追記−
他にフーベルマンとカザルスが共演してウィーン・フィルの演奏会で1932年5月16日と17日に演奏されているという記録がある。ああこれも絶対聞いてみたかった!!
by Schweizer_Musik | 2006-06-12 23:53 | 夢の演奏
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