コンドラシン指揮ショスタコーヴィチの交響曲全集
キリル・コンドラシンの指揮したショスタコーヴィチの交響曲全集からいくつか聞いてみた。
まず第1番である。良い演奏が意外に多いこの曲であるが、その中でも一頭抜きんでているのがザンデルリンクだと思う。この曲のアイロニーを最も感じさせるのはマルケヴィッチの古いEMI録音だが、オケにいささか私は不満をおぼえるため、旧東ドイツのベルリン交響楽団と老ザンデルリンクが組んで録音した演奏に心動かされる次第である。他、ロジェストヴェンスキーのソ連時代の録音も中々に素晴らしいもので、切り込みの鋭い演奏は録音もよく、ハイティンクの全集録音の中のこの曲の演奏も、一点としておろそかにしないもので、多くの人に勧められるものだと思う。録音も全く文句なしだ。
さて、コンドラシンはどうか。テープのヒス・ノイズはあるが、鑑賞には全く影響しないレベルで、ヴェネチア盤の原盤がとても良い状態だったことをうかがわせる。オケの分離も良く、1972年の録音としては最上の部類にはいると思う。
演奏のすばらしさはもう私がとやかく言うことはあるまい。オケのアンサンブルのすばらしさには声も出ないほど圧倒される。ソリスティックな部分が多く、困難な作品ではあるが、余裕でこれを演奏している。
この全集が世界初のショスタコーヴィチの交響曲全集だったのだ。その第1番を聞いた。若いショスタコーヴィチがこの後、数多くの傑作を世に送り出す、その最初の頃の作品。ワルターなど多くの名指揮者たちがこぞって取り上げたという大作曲家の誕生を聞いたわけだ。
その演奏にコンドラシンと手兵のモスクワ・フィルほどの適役はいないだろう。

VENEZIA _CDVE4241
by Schweizer_Musik | 2006-07-15 10:09 | 日々の出来事
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