通俗名曲(なんて嫌な言葉だ!!)に浸る日々、その三日目。今日はペール・ギュントの日。昔聞いたのは、ベルレア指揮のどこかのオケだったように思うが、今日聞いたのはカラヤン指揮ベルリン・フィルの1982年の録音。悪いはずがないでしょ!余裕綽々で心をこめて演奏してくれているのは、実に気持ちが良い。こうした曲で手を抜く奴は二流以下ですと宣言しているようなものだ。面白くないというのなら、やらないでほしいものだ。聞かされる方は迷惑以上の何物でもない。
「朝の情景」はI度とVI度の交替で描写音楽の極致を行っている。これは「夕方」ではないのか、朝ならば何時頃?などとサティを気取って「突っ込み」を入れる下品な会話は相手にしないでおこう。 「オーゼの死」で、弱音器をつけた弦楽がザワザワと盛り上がり、人数以上の迫力を出すなんていう古典的な手にだって進んで引っかかってしまおう。良いじゃないか。このメロディーのユニークな味わい。半音階の下降が次のアニトラの踊りの伏線になっているのもしっかりチェックしておきながら、対比の妙に心をわくわくさせてみようではないか。 アニトラの踊りはどんな踊りなのだろう…。ちょっとエッチな想像をふくらませつつも、カラヤンの適度な演出に品位をギリギリなくさないでいる辺りは、さすがというべきか?「サロメ」の「七つのヴェールの踊り」などよりこちらの方がずっと健全でよろしい。 「山の魔王の宮殿にて」はⅠ度とⅢ度の交替で出来ていて、一曲目「朝」の裏返しだということ、知ってました?そう思って聞くと「なるほど」と思うはず…。 劇伴にしてはとても手が込んでいて、だからこそオーケストラ・レパートリーとしても定着したのだ。しかし組曲版だけでなく、ぜひともその他も少しは聞いてみたくなるところかも知れない。少し興味が拡がってここに来るとネーメ・ヤルヴィなどの全曲盤やブロムシュテットの抜粋盤などが欲しくなる。私は大好きな「婚礼の音楽」が入っていればそれでいいので、ビーチャムがロイヤル・フィルを指揮した抜粋盤で事足りることとなるのだが、イルゼ・ホルヴェーグが歌う「ソールヴェイの子守歌」が最後に入っていて、これがなんとも安らぎに満ちていて好きだ。 ちなみに、このペール・ギュントは、もともとは旧約聖書の中に出てくる「放蕩息子」の話をイプセンが民話風に脚色したもので、最後のところは違っているし、聖書の言わんとしているところとはちょっと違ったところに落ち着いているように思うが、それはともかく「放蕩息子」の話は作曲家たちによく取り上げられていることもチェックしておかなくてはならない。ドビュッシーにカンタータがあるし、ストラヴィンスキーがオペラにしている。このあたりを楽しむようになれば、もう入門者は卒業して一気に上級生である。
by Schweizer_Musik
| 2006-08-10 22:20
| CD試聴記
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